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いくら近しい分野の研究をしていたとて、心が読めるようになる訳じゃない。
それでも、今のAさんが「可愛い」とか「綺麗」とか、そういう言葉をかけて欲しくてこう言っているんじゃないことだけはよく分かった。
……なのに、アルコールによって自制の緩くなった頭では、思ったことを塞き止めることが出来なかった。
「……綺麗だから、Aさん」
安っぽい褒め言葉が口をついて出る。
その言葉に彼女は一瞬目を見張り、すぐにふふっと微笑んだ。まるでお世辞を流す愛想笑いみたいに。
……お世辞じゃないんだけど、結局は自分だって酔っ払いの一員で。
ここで張り合おうとも
「ありがとうございます。
……もしかして私今、口説かれてます？」
くすくすと笑いながら、おどけたように肩をすくめる。
「別にそういうつもりじゃないけど……」
「分かってますよ。
……ノブくんがそういう人じゃないこと位は、付き合いの短い私にも分かります」
機嫌が良さそうに、ふわふわとした足取りで先を行く彼女。言っておくが、向かっている先は勿論駅だ。
元々そういう話だったから。
だけれど、気づけば彼女の細こい腕を掴んでいた。
こんな危なっかしい人を野放しで歩かせられない。
それに──どちらかといえばこっちが本音だけれど──今日このまま駅で別れてしまうのは、何だか勿体無いと思った。
今日という日を、ただの「合コンに参加した日」にしたくなくて。
……そうだ。これは俺のエゴだ。我儘だ。
「……？ どうしたんですか？」
その華奢な手首を掴んでいれば、こてんと彼女は首を傾げる。
俺の目にはひどく
「飲み直さない？ ……二人で」
若干掠れた声で問いかければ、Aさんはまるでそう言われるのを分かっていたみたいに頷いた。
「……私も、このまま帰るのはちょっと勿体無いなと思ってたところです」
ぬるい夜風を全身に受けながら。二人並んで道を行く。
手は繋がない。睦言を交わしもしない。
俺たちの関係に名前はないから。
それでも敢えて名前をつけるとするならば。
そう、定期を落とした人と拾った人。
当然恋人でなければ、友人とも呼ぶのも気が引ける。
今はそんな関係でいい。
今日が終わる頃、隣に居られるのならそれで。
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じばくスイッチ(プロフ) - ユメさん» そんな風に思って頂けたら……というコメントを頂戴して驚きと共に大変嬉しいです。ありがとうございます。きっと青春って甘くてきらきらしたものばかりじゃないよなぁという思いで書いておりました。こちらこそ、読んでくださり本当にありがとうございます。 (2023年3月10日 7時) (
レス) id: 3711322760 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - ほんの少し何かが違っていれば結ばれていたようで、でも何度やり直しても同じ結末を辿りそうな二人の関係が本当に切なくて美しくて、こんなに素敵な作品を世に出してくださった作者様に感謝です。 (2023年3月9日 21時) (レス) @page26 id: c6aaf0c2c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：じばくスイッチ | 作成日時：2023年1月3日 23時
