第1章 籠城のシンデレラ ページ1
.
都会で暮らしているとついつい忘れがちな電車の時刻表。
だってホームには数分おきに電車がやってくるし、電光掲示板には次の便の時刻と行き先が表示される。
慣れない場所は多少下調べが必要だけど、何線の何時に来る電車に何番ホームから乗るのかさえ覚えていれば、迷うことはまず無いはずだ。
――慣れている場所であれば尚の事。
名古屋駅で、天井を見上げずに目的の路線に辿り着けるようになったのは、帰省というものをするようになって半年が経つ頃だったっけ。
大学生活も四年目となった今では、目を瞑ったままでも辿り着ける気さえする。
……勿論、気がするだけだ。
そもそも人が多すぎて、目を閉じたままじゃ目的地にたどり着くどころか、誰にもぶつからないように歩くことすら困難なのだから。
なんてことを考えながら新幹線南口の改札を出て、目的地があるのは右手側。
でもその前に、飲み物でも買っておこうと左へ曲がった。
南口の改札を出て、左手。
つまり駅の西口……俗に言う、「銀時計」側だ。
名古屋駅の待ち合わせスポットとして知られる二つの時計の、銀の方。
もう一つのスポット、今いる場所の反対側……駅の東口側にある「金時計」の話は、また今度するとして。
そんな訳で、待ち合わせのために人が集まる銀時計の近くの、売店へ向かおうとした時だった。
目の前を歩いていた人のカバンから、何かが落ちて自分の足に当たる。
拾い上げるとそれはどうやら定期券のようで、券の真ん中に大きく『名古屋ー京都』と書かれていた。
地下鉄では無い、新幹線の定期だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
じばくスイッチ(プロフ) - ユメさん» そんな風に思って頂けたら……というコメントを頂戴して驚きと共に大変嬉しいです。ありがとうございます。きっと青春って甘くてきらきらしたものばかりじゃないよなぁという思いで書いておりました。こちらこそ、読んでくださり本当にありがとうございます。 (2023年3月10日 7時) (
レス) id: 3711322760 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ(プロフ) - ほんの少し何かが違っていれば結ばれていたようで、でも何度やり直しても同じ結末を辿りそうな二人の関係が本当に切なくて美しくて、こんなに素敵な作品を世に出してくださった作者様に感謝です。 (2023年3月9日 21時) (レス) @page26 id: c6aaf0c2c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：じばくスイッチ | 作成日時：2023年1月3日 23時
