. ページ13
.
お互いの呼吸の音以外は何も聞こえない。
まるで世界に忘れられてしまったみたいだ。
この世界から分断されて、二人きりの世界。それはなんだか、あまりにも。
「……寂しいね」
「Aがいるから寂しくないよ」
「……もう」
違うの、私が言いたいのは。
もっとスケールの大きい話なの。
私の両手首を優しく押さえた時の彼のセリフを鸚鵡返しにしながら、そんな言い訳をしようとしたところで、やっぱり私は子供だなと思う。
真っ直ぐな愛情に素直になれないのだから。
「ほっぺ赤いよ？ 照れてるの？」
「寒いからだもん」
ぷにぷにと私の照れた赤をつつく指が「う、そ、つ、き」とその場でなぞり書く。
「嘘じゃないですー」
「おぉ今のわかったんだ？ じゃあもう一問」
少し斜め上を見て考えるような素振りを見せてから。
彼の細い右の指先は私の頬に、雪よりも儚いラブレターを綴った。
「い、っ、し、ょ、に、二……度……寝、し、ま、せ、ん、か？」
「正解」
「します！ はい」
手を広げて腕を伸ばせば「ソファまではセルフサービスでお願いしまーす」と、よく分からない返しをされた。
なんだそれ。
暖房の効いた部屋で二人、もこもこのブランケットにくるまって。
冷えていた指先も、触れ合う熱で溶かされていく。
起きたら温かいココアでもいれようか、そう思いながらゆっくり意識を手放していく。片頬を大好きな人の胸板に寄せて。
反対の頬を優しく撫ぜられる感覚。
とうとう瞼の下りた私を見てか、ふふっと笑った声を最後に聞いた気がした。
いいよ、まるで母親に縋る子供のようでも。
貴方が毎晩腕の中で、私を暖めてくれるなら。
⿴⿻⿸
積もる雪、募る好き
「いとけない、だから君はほっとけない」
――そう言って初めて握ってくれた手は、
緊張からか氷のように冷たくて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 253人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：じばくスイッチ | 作成日時：2022年8月6日 21時
