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「これはですね……」
まるで内緒話をするかのように。
蓋のように上に乗せていた片手を口の横に添えて、声を潜めて彼は言った。
「Aさんの幸せを、逃げないように捕まえてるんですよ」
「……は？」
幸せを、捕まえる……？
仕事のことでごった返していた頭の中が、一瞬にして疑問符で埋め尽くされる。おまけに眉間に皺が寄る。
そして私がなんとなく理解するより一瞬早く、続けざまに彼が口を開いた。
「ため息をつくと幸せが逃げるっていうでしょ？ だからため息を僕が捕まえてたんです。なんで、Aさんの幸せ、逃げてませんよ」
「はぁ」
「あー！ 馬鹿にしてますね！」
「してない、してないよ」
思わず笑いをこぼしつつも手のひらを左右に振って否定する。
……本当に馬鹿になんてしていないのだ。
なんというか、いい意味で力が抜けた。
どれだけ根を詰めて仕事をしたって、いいアイデアが浮かんでくるとは限らない。
休む時にはしっかり休んでバカなことで笑える方が、仕事の効率的にも精神衛生的にもずっといいだろう。
バカなこと……ということはやっぱり、馬鹿にしてる？
まぁ、いいや。
「……今、隣にいてくれるのが響平でよかった」
「なーんか昔の人をちらつかせる言い方ですね」
「ごめん、わざと」
たとえ馬鹿にしてたとしても、ちゃんと好きだよ。
今までの人となんて、比べるまでもなく。
先程チラついた夜の記憶がじわじわと蘇る中、座ったまま目の前の身体に抱きついて「許して、なんでもするから」と遠回しな誘い文句をかけてみれば、返ってくるのはやっぱり、響平節の聞いた言葉なのだ。
「なんでも……？
じゃあ、ラーメン食べに行きましょう！！」
「……ラーメン？」
「はい！ なんでもって言いましたもんね！」
「……うん。そうね、わかった。行こう。今から」
「やったー！！」
空の端が赤く染まり始めた日暮れ時、退勤するサラリーマンに混じって街へと繰り出していく。
ふたり幸せを零さないように、しっかりと手を繋いで。
⿴⿻⿸
きみにとっての玉手箱
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??????_??(プロフ) - 初コメ失礼します。めっちゃ最高です🥹私はkochan推しなのですが、izwさんメインの『華胥之夢』が絶妙にエロくて刺さりましたwやっぱりizwさんとkwmrさんはQK二大お色気組ですよね！wこれからも引き続き楽しく読ませて頂きます♪ (2022年11月12日 22時) (
レス) @page49 id: 7968ecbec3 (このIDを非表示/違反報告)
じばくスイッチ(プロフ) - JACKさん» はじめまして、コメントありがとうございます。書き手様にそういって頂けると嬉しさもひとしおですね……！ これからちょこちょこと更新しますのでどうぞよろしくお願い致します。 (2022年7月23日 19時) (レス) id: 3711322760 (このIDを非表示/違反報告)
JACK(プロフ) - はじめまして。言葉と雰囲気が素敵でした！それぞれ御相手の個性がしっかり描けていて一気に読んでしまいました！更新楽しみにしてます！ (2022年7月23日 13時) (レス) @page27 id: ab0ec0b714 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：じばくスイッチ | 作成日時：2022年7月19日 15時
