優しい君がついた嘘 [及川徹]

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突然だけど、俺には彼女がいる


名前は南A。


Aは、一言で言うと優しい。


電車とか乗ったら、お年寄りに席を譲ったり


迷子の子がいたら、一緒に家族を探してあげる


などなど、とにかく優しい。


そして、面倒見もよかった。







「A〜。」


「なに？」


「今日一緒に帰れる？」


「わかった。終わるまで待ってるから。」


「うん、わかった。」



ばいばい、と手を振るA




ニヤニヤしながら手を振り返す。




デレデレすんな！って岩ちゃんに言われたけど

Aがかわいいんだから仕方ない。






部活が終わり、校門まで行くと


Aが待ってくれていて。


春とはいえど、まだ肌寒い。


かじかんだ指先に息を吹きかけていたA


その姿さえ愛しく見えてしまうなんて


重症、っていうんだろう。






「徹、お疲れ様。」


「ありがと〜！さ、帰ろっか。」


「うん。」




歩き出すと同時に、自然と手を繋ぐ。

長い時間待っていてくれたのか

Aの手は冷たかった。






「徹。」


「何？」


「好き。」


「‥‥！俺も、好きだよ。」




そういうと、嬉しそうに笑ったA



この笑顔も、声も、優しさも。



消えてしまうなんて。



この時の俺には、考えられなかった。









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