十三話 ページ14
〜三日月side〜
食事の準備をするAの後ろ姿を見ながら、茶を啜っていると、後ろから覚えのある気配がした。
「主よ、少し席を外す」
「主？ あ、うん。分かった。 もう出来るから、早く戻ってこいよ」
「あい、分かった」
厨を出ると、首に刀が添えられる。
「何用かな、長谷部よ」
「どういうつもりだ。 人間を本丸に入れるとは」
「どうもこうも、彼奴は新しい審神者だ。この本丸に入るのは当然だろう」
「俺達は認めていない！」
怒気を含んだ目が俺に訴えかける。
みなが、まだAを認めていない事は分かっている。
けれど、彼奴以上に審神者として適任な人間は他にはいまい。
「刀を下ろせ。 兎に角、話をしよう」
「断ると言ったら？」
「それなら････」
俺も己の刀に手をかけ、鞘から抜こうとした。
その時、
((ｺﾂﾝｯ
後ろから俺の頭をこずく何かが触れ、後ろを見てみる。
すると、エプロンを付け、オタマを持つAと目が合う。
「ど、どうした？」
「どうしたもこうしたも無い。 こんな所で刀を抜くんじゃない。 あと、ご飯出来たから食べよう」
「････分かった。」
長谷部の方を見ると、Aの突然の登場に驚いたのか目を丸くして固まっている。
「ん？ そっちの人は････」
「この本丸に住む刀剣だ」
「そうなんだ。 初めまして、僕は雪白Aです。貴方の名前をお伺いしても？」
そう言って笑顔を見せるAだが、俺はふとあることに気づいた。
「主よ」
「だから、その呼び方何だよ。気持ち悪い」
「あの狐から説明されていないのか」
「なにを？」
不思議そうに首を傾げるAを見て、俺は溜息をついた。
この様子だと本当に何の説明も受けていないんだな。
「神に真名を教えてはならない。 それは弱みを見せることど同義だ。」
「は？」
「俺達も神の端くれ。 真名知れば、その名を使い神隠しをする事も出来る。」
「････神隠し」
少し怖がらせすぎただろうか。
けれど、此処ではお主の常識が通用しないという事を十分に理解してもらう為には、これくらい言わなければならない。
だが、そこまで話をした俺へと返ってきたAからの返答は、想像を遥かに超えるものだった。
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