十二話 ページ13
「狐よ、そろそろ出てきてはどうだ？」
「････気づいておられましたか」
後ろの襖から姿を見せたこんのすけさんは、少し怯えた表情で此方へ歩いてくる。
さっきまで活き活きしていたのに、どうしてあんなに怖がって････
まさか？！
「三日月宗近！ こんのすけさんを虐めたな！」
「虐めてなどおらん。 それとA。その呼び方はやめろ」
「絶対嘘だ！ 凄く怯えてるじゃないか！ あと、呼び方はずっとこれだから」
僕は布団から出て、こんのすけさんを抱きしめる。
少し震えている体は、やはり三日月宗近に怯えている事を物語っている。
「おい、狐。 Aから離れろ」
「こら！睨むな！大丈夫だよ、こんのすけさん。 僕が守ってあげるから！」
「審神者様ー！！！」
縋るように僕の胸に顔を埋めるこんのすけさん。
やっぱり動物は可愛いな。
ふわふわとした毛並みを撫でてやると、少しずつ震えも止まっていく。
けれど、
「狐。何度も言わせるな。 そこを退け」
目の前の男は、先程の女らしい態度から一変。
こんのすけさんに向け殺気を放つ。
「宗近兄ちゃん、刀を抜かないで。 僕の事切るつもり？」
「？！ ふむ。 じじいは、茶でも飲むとするかな」
はははと笑いながら立ち上がった宗近兄ちゃんは、縁側に戻り茶を啜り始める。
単純というか、
簡単というか、
なんか、
「可愛いな」((ﾎﾞｿｯ
「審神者様？」
「ん？！あ、何でもない。 そういえば、さっきまで何処に行ってたの？」
「審神者様のお荷物を転送装置を使って運び込んでおりました！ お隣の部屋に置いてありますので、またお時間のある際に片付けをしましょう！」
何て気の利く狐だろうか。
縁側で茶を啜っている宗近兄ちゃんとは大違いだ。
「こんのすけさん、僕の嫁に来ないかい？」
「え？ 審神者様？！」
「A。それは許さぬぞ」
鋭い眼光が僕に向けられる。
いや、怖い。
「あ！そうだ！審神者様！ そろそろお昼時ですので、お食事の準備を致しましょう！」
「此処、台所とかあるの？」
「はい！ 一応、厨がございますので、其方で料理が出来ます！調味料や食材は、政府から用意されておりますので！」
「そうなんだ。便利だね」
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