【世界一初恋】貴方の瞳に映らなくても【男主】 (ページ3)

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3話ページ3

「お前、何してんの」

「担当の先生方のデータ整理と、売上部数の計算、読者の傾向や、高評価だった話の傾向から今後のストーリー展開をどうするかなど、色々と考えていました」

「営業成績一位は堅物なのか？」

「堅物じゃありません。失敗が出来ないのでやってるんです」

「ふーん」

興味無さげに僕から離れた高野さんは、何故だか自分の席へと戻る。

何故？

小野寺さんもいないし、もう帰ってくれよ。

何か気まづいだろう。

「高野さんは帰られないんですか？」

「なに、俺が居たら都合悪いわけ？」

「あ、いえ。すみません」

推しと同じ空間に居て、しかも二人っきり。

こんな夢のような状況に動揺しないわけが無い。

取り敢えず一回この場から離れて、高野さんが帰ったタイミングで戻ってこよう。

「僕、ちょっと晩御飯買ってきます」

目を伏せたまま、立ち上がり背を向け歩き出す。

後ろから注がれる視線には気づかない振りをして、早足でその場を離れた。

ドキドキと鼓動する心臓の音がやけにうるさい。

この人が好きなのは、今も昔も小野寺さんだけだ。

そんなこと分かっているのに。

どうしても、この心音が止まらない。

なかなか来ないエレベーターを待つこと3分。

小さくなった心臓の音に少しホッとしながら、エレベーターに乗り込むと、

「待て、俺も乗る」

ガンッと閉まりかけた扉が音を立てて止まる。

逃げたと思ったら訪れる静寂。

気まづい。

ただただ気まづい。

「お前、家何処にあんの」

「え？」

「これ、お前の荷物。データ保存してパソコンも切ったから。とっとと帰んぞ」

「はい？」

エレベーターを待っている間、確かに何かガサガサと音は鳴ってるなと思っていたけど、この人は一体何をしてるんだ。

というか、どうして此処まで僕を気にかけてくれるんだ。

「いや、僕は残って････」

「編集長命令だ。それで、家は何処だ」

自分よりも15cm以上高い身長の彼から見下ろされ、放たれる圧に口を噤んだ僕は家の住所をおずおずと見せた。

「は？」

「え？」

「俺と小野寺と同じマンションかよ」

神様。どうして貴方は此処まで意地悪なんでしょうか。

丸川から進められたマンションに引っ越した結果がこれなんて、あんまりだ。