【世界一初恋】貴方の瞳に映らなくても【男主】 (ページ11)

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11話ページ11

世にいう不幸が続けて俺にのしかかり、全ての事に投げやりになっていた頃だった。

「嵯峨先輩！！」

西岡と出会ったのは。

眩しいくらい純粋な笑顔で声をかけてきた西岡は、俺に苺みるく味の飴を差し出した。

「は？なにこれ」

「嫌な事があった時は甘いものですよ！」

接点も、関わりもない奴。

名前も学年も何も知らない人間から言われた予想外の言葉に、驚き戸惑った俺は八つ当たりをするように怒鳴り声をあげた。

「誰だてめぇ！何も知らねぇ癖に話しかけてくんじゃねぇよ！！」

「あ････すみません」

あの時の西岡の顔は今でも忘れない。

俺を蹴り飛ばして部屋を飛び出した小野寺と同じ表情をしていたから。

謝らないと。

頭では分かっていても、どうしてもその一言すら言う余裕が俺にはなかった。

「ﾁｯ」

その後の授業も受けず、俺は家に帰った。

それからだった。

その後輩が、やたら俺の後を着いてくるようになったのわ。

理由を聞けば「嵯峨先輩の事が知りたいんです！」と答えた。

だが、俺の事を知るつもりがあるのか定かじゃないのが西岡Aという奴だった。

知りたいと言いながら、俺の傍に居ればずっと自分の話ばかりをしている。

返事も相槌すらもしない俺の事など気にせず、

変なやつだ。

そう思う反面、アイツといる時だけは嫌なことを考えずに済んだ。

その後、俺が高校を卒業してからはパタリと会うこともなくなった。

だが、まさかアイツとこんな所で再会することになるとは思ってもいなかった。

小野寺と再会したのが1年前。

続けて西岡とも再会。

何の縁があるっていうんだ、あの会社は。

そんな事を思いまながら風呂から上がった俺は、タオルを頭にかけリビングへと向かった。

廊下を通り扉を開けると、ソファーで崩れ落ちるように寝ている西岡の姿が目に入る。

さっきまで、あんなに居心地悪そうにしてた癖に爆睡か。

眠る西岡に近づくが起きる気配が全くない。

高校の時もそうだったな。

話疲れて、俺の肩に凭れて寝ていることが多々あった。

「変わってないな、お前は」

そっと髪に触れると、眉が微かに動く。

起きるかと思ったが、変わらず気持ちよさそうに寝息をたて眠っている。

「仕方ねぇな」