慈しき桜姫は刃を振るう 弐【鬼滅の刃】

第漆章＿新たな仲間と鼓屋敷 ページ24

はるに導かれながら、Aはどんどん目的地に向かっていた。

「あれ、分かれ道……」

「ドッチカラ行ッテモ着ク！！好キナ方選ンデ良イワヨォォ！！」

かなり走ったから、もうすぐ炭治郎に追いつける筈だ。
でも、炭治郎はどっちに向かったのか……
いや、でも目的地に先について炭治郎を驚かせるのも良いかも知れない。

(よし、それで行こう！……炭治郎が行ってない方は……)

得意の勘を発揮させ、Aは左の道に入った。
風景はすっかり田舎で、Aの生まれ故郷ともよく似ている。

広がる田んぼを眺めて家族との思い出を思い出しながら歩いていたら、いつの間にか大きな屋敷が見えてきた。

「あれ？」

「アレ！！」

昼間に鬼狩りの任務なんてどういう事かと思ったが、鬼が現れるのは建物の中らしい。ならば納得が行く。

「……あら？」

ふと、Aの視線がある一点に向かった。
屋敷の周りの木々に紛れて、二人の子供が互いを抱きしめ合って立っていたのだ。

Aと目があった子供達は、ビクッと体を震わせ何かに怯えている様子だった。

「あのお……」

小さな子供二人がこんな所で何をしているのか問おうとAが二人に近付くが、怯えられるのみ。

男の子とその子より少し歳下の女の子の二人組で、おそらく兄妹なのだろう。

「どうかしたの？お姉さんに、何でも話してごらん」

Aはしゃがみ込んで二人と視線を合わせ、安心させるように尋ねた。
小さい子供の扱いには慣れている。

「あ、あの家に……兄ちゃんが……」

「お兄ちゃんが、どうかしたの？」

その先を明らかにしようと更に尋ねるが、男の子が答えようとしたのをこちらに近付く足音と話し声が遮った。

「何で俺が行かなきゃいけないんだよ！？炭治郎だけで充分だろうが！！」

「善逸、そんな事を言わないでくれ」

若干怒っている声と、宥めるような困った声。
困った声の方は、よく聞き覚えがある声だった。

「炭治郎の声……」

もう一方は知らない声だ。
だが、どこかで聞いた事があるような……

「あ、えっ！？A！」

「ふふふ、先に着いちゃった」

炭治郎は姿を表すやいなや、Aの予想通りの良い反応をしてくれた。

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