慈しき桜姫は刃を振るう 弐【鬼滅の刃】

第伍章＿鬼の始祖・幻惑の血 ページ2

沼鬼との戦闘の翌々日。

Aと炭治郎、そして禰豆子は、浅草への道を順調に歩んでいた。
夜なので、禰豆子も箱の外に出ることが出来る。

「禰豆子ちゃん、もうすぐ着くからね。眠いかもだけど頑張って」

禰豆子は返事をする代わりに、こくこくと首を縦に振った。
この数日で、Aと禰豆子の関係はだいぶ深まった。

かわいらしい禰豆子の様子を見ていると、妹達の事を思い出すのだ。

「あっ……もしかして、あの町か？」

炭治郎が、少し遠くにある明るい建物の集まりを指さした。
Aは頷いて、肯定の意を示す。

「あそこが浅草よ！」

「そうか……！じゃあ本当にもうすぐだな！」

炭治郎の顔が、嬉しそうに輝いた。



東京府浅草。
無事到着した一行は、浅草の街並みを眺めていた。

「うわぁ……久しぶり……」

Aが周りを見回すが、隣の炭治郎はのんびり街を見ている場合では無さそうだ。

“都会耐性”が無に等しいらしく、目に入る何もかもが珍しいというような凄い表情をしている。

「だ、大丈夫？フラフラしてるけど……」

Aが慌てて炭治郎の体を支える。

「だ……大丈夫だ！ちょっと見慣れないものが多すぎて目まいがしただけだし……」

大丈夫とはいうものの、炭治郎のフラフラした足取りからしてそうとは思えない。

「とりあえず、人混みの少ない場所に行って休みましょう。ほら、あっち」

「そうだな……あっちいこう」

うとうとしていて半分寝ている禰豆子の手を引いて、炭治郎が町外れの方向に歩き出す。

(私も最初に来た時はびっくりしたし……炭治郎が驚くのも仕方ないわよね)

Aが過去の事を思い返しながら、炭治郎の気持ちに同調する。

今にも倒れそうな炭治郎と禰豆子をAが何とか支えつつ、三人はうどんの屋台に辿り着いた。

「山かけうどん、ください……」

「あいよ」

疲れ果てた表情で、炭治郎がうどん屋の店主に注文する。

「はぁああぁあ……」

お茶をすすりながら、炭治郎が深くため息をつく。

「都会は凄いんだな……」

「進んでるわよね……」

自然に囲まれて育った二人には、やはり通じるものがあるらしい。揃ってため息をついた。

「！」

……と、突然Aの第六感が強烈な反応を示した。
身の毛もよだつ、嫌な感じがする。

「炭治郎……近くに何かがいる(・・)！」

「この匂い……もしかして！！」

炭治郎とAは目の色を変えると、ガタッと立ち上がった。

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