財前光・雨 ページ1
今日の天気予報は昼から大降りだと聞いていた。
ザーザーと窓に打ちつける雨の音を聞きながらシャーペンをサラサラ走らせる。それからすぐに、書き終えた日直日誌を職員室へ持っていく。
今日は私と同じ、日直の子が用事で先に帰ったので1人で日直仕事をこなしていたからいつもより少し時間がかかってしまった。
さて、帰るかと校舎の玄関口に行けば見覚えのある姿が見えてくる。
あれは…財前くん?どうしたんだろう。
傘、忘れたのかな?謙也くんと違って忘れなさそうな性格してると思ってたんだけど
ちなみに謙也くんは勿論、忘れてた。
午後、いきなり降り出した雨に「あーっ!あかん!傘忘れてしもた!」と叫んでいた。もちろん、授業中だったから皆に笑われて先生にはちょっと呆れられていた。
クスクスとちょっとした思い出し笑いしてると、あちらが声と足音で気づいたのか、こっちに向かって顔を振り向かせてきた。
「あ、A先輩。こないな時間まで居残りですか?」
「違うから、今日は日直だったの。それより雨けっこー凄いけど財前くん、傘は?忘れたの?」
「あぁ、それなら謙也さんに貸しましたわ。俺にはもう一本あるんでってそー言うて。謙也さんと違って大会前に、ずぶ濡れで、わざわざ風邪ひきに行くなんて、アホなことしませんよ」
部活の先輩にサラりと毒を吐く財前はなんというかホント手厳しい。
「あぁ、そう。えっ?なんだ、傘あるんだ」
なんだ、あるのかとツッコミを入れれば、ニコリと普段の財前らしくない顔
「優しい優しいA先輩なら入れてくれますよね?あぁ、もちろん傘は俺が持ちますけど」
「っ!」
ひょいと、下の方から顔を近づけられてどきってする。すぐにフッと悪い顔する財前のなんと面のいいことか。自分の顔が熱くなってるのを自覚しながら私は目の前の彼に傘を差し出した。
結局、家に着く最後の最後まで遊ばれた私の火照った顔が冷めるのはかなり時間が経ってからだった。
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作者ホームページ:なし 作成日時:2022年2月17日 18時