ちいさな救世主part2 ページ5
「ねぇ。」
ポツリと、小さな声が辺りにこだました。
スルリと心に入って来る綺麗な声に、周りにいた
全てが止まる。
「な、何だえ。セリシア」
俺に続くリードを持った少年が、首に指をかけられているかのような声を出した。
「私は貴方に話しかけたわけじゃない。
そこの地面に這いつくばった男に話しかけてる」
「は……っ？」
「そう、貴方。」
混乱しながら、痛みに耐えながら前を向くと
美の化身のような先ほどの少女がそこにいた。
その目はしっかりと、汚れた俺をうつしている。
少女はじっと何かを探るようにこちらを見てから
直ぐに少年の方を向いた。
「私、この人が欲しいな……譲ってくれる？」
「ま、待つんだえ！」
少年が焦ったように俺を指差した。
そう言う俺だって状況を飲み込むのでやっとだ。
「何で」
少女、セリシア宮が不機嫌そうに顔をしかめた瞬間
いつの間にかできていたギャラリーがザワザワとし始めた。
中には恐怖で顔を歪めているものもいる。
「洗浄してから譲るんだえ！」
「家に帰ってから風呂に入れる。そんなことはどうでも良いから私に譲れ」
「わ、わかったえ……」
キッパリと断りを入れた少女は後ろについていたSPに俺を運ぶようにと命令し、またしてもゆったりと歩き出した。
暫くすると少女が歩みを止めた。天竜人にしては珍しく自分で扉の閉会をしている。
「お帰りなさいませ、セリシア宮。」
「あぁお帰り。そこの男の人の治療をしてくれる？
傷はあまり深くないし銃で打たれた程度だから」
「はい、お任せください！」
「いつもご苦労様」
セリシア宮は、それだけ伝えるとすぐに二階(もしかすると6階ほどかもしれないが)に上がって行ってしまった。
全てが、おかしい。
例えば使用人がセリシア宮を出迎えた途端うれしそうにしていたこと。
例えばSPが屋敷に入った途端に当たり前のようにサングラスを外したこと。
「良かったですね、空気圧砲で。弾丸が入っていたらもっと酷かったと思いますよ。」
使用人が俺に包帯を巻きながら言う。
「……んで、」
「何ですか？聞こえないですよ」
「何で俺に命令しない！何で俺に優しくする⁉」
怒鳴り散らすと、使用人は驚いた顔をしたが
次の瞬間に、花が咲いたように笑顔になった。
「……これがセリシア宮の当たり前なんです。」
俺は自分の目から流れる涙をとめられなかった。
ラッキーアイテム
白い鯨
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (4月25日 1時) (
レス) id: 388da595fc (このIDを非表示/違反報告)
優李(プロフ) - 咀嚼音いります？？ (2021年5月6日 13時) (レス) id: e006b8a2f6 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか(プロフ) - とても面白かったです！ちなみに私は1年経ってもクラス全員のフルネーム覚えれませんでした。←どうでもいいことをすいません (2021年3月6日 21時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
鴉麗(プロフ) - snowさん» 率直で嬉しいコメントをありがとうございます、ぼちぼち更新していきますので、よろしくお願いします！ (2017年12月11日 22時) (レス) id: fe16c709f3 (このIDを非表示/違反報告)
snow - 面白いですね (2017年12月10日 15時) (レス) id: ca8fc47821 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鴉麗 | 作成日時：2017年3月26日 1時
