🌕EP.189 乾いた《地》より見る月は ページ24
「オイ、A」
兵長が私の名を呼んだ。
見ると、数歩進んだ先で立ち止まりこちらを振り返っていた。
そして、私の目の前には右手が差し出されている。
「行くぞ。連中も待ってる」
普段の兵長からは考えられないようなその行動に、一瞬何が起きたのか分からず、動揺する。
少しだけ戸惑った後、右手を差しだそうとするも、
はぁー。と、ため息が聞こえ、
「そっちじゃねぇ」
と、一言。
不思議に思ったが、
言われるままに、
その差し出された手に、
ぎこちなく、自分の左手を重ねる。
触れた手のその温もりに、
鼻の奥がツンとなり、自然と涙がこみ上げた。
「あーーー！！リヴァイがAを泣かしてる！！」
聞こえてきた声に、慌てて涙をぬぐおうと手を引っ込めようとするも、
左手は思った以上にしっかりと握られていて、引っ込める事ができないまま、
な、泣いてません！これは海の水です！！
泣いてしまった事が気恥ずかしくて、空いている右手でそれを拭き取った。
だけど、ハンジ団長はそんな事お構いなしで、
「者共かかれー！リヴァイからAを取り返せ〜！」
“褒美は肉だ！”と言い、先導してこちらにバシャバシャと走って来ながら、そう号令をかける。
「おー！」
「早く帰ってお肉です！！」
とコニーとサシャ。
「いや・・・無理ですから」
冷静にジャンが返す。
「今こそ、しかるべき報いを・・・」
と、本気なのか冗談なのかわからない事を言って、こちらに来ようとするミカサ。
「や、やめときなよ！」
「おい、ミカサ！本当に行くな！」
それを止めるアルミンとエレン。
なんだか、みんな
すぐ横で兵長の舌打ちが聞こえ、
気がつけば私は、
声を上げて笑っていた。
あの時から、色々ありすぎて幼馴染の関係も、調査兵団の雰囲気も随分と変わってしまったのかもしれない。
そして私の隣に、アーチャーはいない。
だけど、今の私には、
こうやって心配してくれる人も、
笑わせてくれる人もいる。
仲間に強がる必要なんてないのかもしれない。
そう思うと、少しだけ肩の力が抜けた。
───うん、大丈夫。
きっと私も、前を向いて歩いていける。
だって、今まで繋いできたものがあって、
私は、こうして生きることを許されている。
そして何より、
今ここに、道はあるのだから。
そう、強く思うのだった。
*
*
*
ＥＮＤ・・・
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名無し - 初めまして。設定が面白そうだなと思い途中まで読ませて頂きました。ただ主人公が話している部分がちょっと分かりづらいところがあるので『』を使った方が分かりやすくなるのではと思いました。 (2021年11月9日 10時) (
レス) id: 5e4676d401 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：kokubyaku | 作成日時：2020年1月31日 23時
