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🪶EP.180 ページ15

確かにAは、寝る、食べるという、生きる為の基本的な行動は出来ているようだ。

それが、ギリギリAをこの世に繋ぎ止めている。

物理的には死にはしない。

だが、心をなくしたままで、本当に生きていると言えるのか?



生気をなくし、光を失ったその眼。


こういう目をしたガキを、確かに俺は知っていた。



それは、地下街で酷い暮らしをしてきた人間のようだ。

だが、それとも少し違う。

何をしても無駄だと知った人間は、無気力になるが、


Aは無気力とはまた違う。


此方がやれと言ったことはキッチリやる。

()めろと指示されるまで。

ルールも守る。

怖いくらい正確に。


・・・感情がない

まるで人形のような・・・

いや、人形なら動かねぇ。

あれは・・・


“─── あれじゃ、機械のようだ”


ハンジの言葉を思い出す。

それは、

トリガーを引けばアンカーが射出されるように、

此方が指示を出せば、その通りに動く、


知能のある、

人の形をした機械。


そこに考えが及んだ所で、背中に冷たいものが走る。


だが、それに気づき、こっちがどれだけ感情をぶつけようが、

Aから返ってくる反応はいつも感情(ソレ)が見受けられない。

俺の気分は悪くなる一方だ。


そんな日々が続く中、Aのある行動が目についた。

Aは、自分の感情が揺らぎそうになると、必ず右手で左手の甲を触る。

そこには、レイジュと呼ばれるものが刻まれている。

一つだけ残ったそれは、弓兵に対する絶対的な命令権。

つまりは、ヤツとの繋がりの証だ。





Aの中に確かに心はある。


過酷な状況でも生きたいと、強く足掻いた激しい願い()

それが、こいつの内側にある事も、俺は知っている。


それを失くしたまま、

まるで死んだようにして生きるつもりか・・・


いつものように、ゴチャゴチャと考え始めた自分の思考を切り替えた。


今日も目の前で、

いつもと変わらない表情で、

いつもと変わらない態度で、仕事を続けているAに目を向ける。


それを見続けるのも、

大概、限界だった。


「いい、止めだ」

そう声をかけ、椅子から立ち上がる。

「まだ、業務時間内です」

Aの発した言葉に、大きく溜め息を吐くと、

「止めだと言っている。いいからついて来い」

そう告げて数歩進むが、その場に佇み、すぐについて来ないAの腕を掴んで、

強制的に外へと連れ出した。


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名無し - 初めまして。設定が面白そうだなと思い途中まで読ませて頂きました。ただ主人公が話している部分がちょっと分かりづらいところがあるので『』を使った方が分かりやすくなるのではと思いました。 (2021年11月9日 10時) (レス) id: 5e4676d401 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kokubyaku | 作成日時:2020年1月31日 23時

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