【文スト】ゼロの起点 (ページ38)

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裏道を通ってミハイルさんと並んで歩いていていると、上から影が掛かる。

「やあやあドスくnﾄﾞｴﾌｯ」

陽気な声が掛かったかと思うと、ミハイルさんの盛大な拳の一手により地面に伏した。

「どす…??ちょ、え？…お兄さん大丈夫ですか？
ミハイルさん！急に殴るだなんて！」

「Aさん、あれは変質者です。与えるべき制裁を与えているだけですよ。」

「酷いじゃないか！」

「彼の反応を見るに貴方のお知り合いの様ですけ」

「嗚呼悲しいです、Aさん。初対面の男と先ほど介抱した僕のどちらを信じるのです？」

どっちも信用できないんですけど。
確実にお二人はお知り合いなのでしょうね。
ミハイルさんは男が何か口にしようとする度に、問答無用で黙らせている。あまりに男が不憫で可哀想すぎて、流石に止めようとミハイルさんの腕を引いた。被害者の男はまるで人を惑わす道化師の様な言動と服装をしていた。なるほど、確かに怪しい。ミハイルさんの言う通り変質者なのかもしれない。じーーっと男を見つめていると、一種の違和感のようなものを感じて首を傾げる。

「そこの道化師のお兄さん。
　私と会った事がありませんか？何だか見覚えが…」

その瞬間、ミハイルさんと道化師の男の動きがピクリと止まった。ミハイルさんの道化師の男に向ける目からは完全に光が消え、正に絶対零度。対してその目を向けられた道化師の男は、この世の終わりと言ったように顔面蒼白。

「？」

何か変な事でも言ったかな。
ミハイルさんは頭痛に魘されるかのようにな呻き、小さなため息を溢す。

「この男の服装は奇抜ですからね。どこでお会いしたのですか？」

言われてみれば。
彼の目立つ服装や言動は記憶に残りやすい…が、それを見た事はあるかと問われれば覚えはない。
目の前の二人の言動は怪しいことこの上ないが、やはり私の記憶違いだろうか。上手く丸め込まれた気がする。納得できないが渋々謝罪する。
それよりも気になるのは。

「突然何もない空間から現れるだなんて、やはり魔法使いみたい。これが異能力と言うものですか？」

生まれて初めて“異能力”というものを目にした私は、高揚感のままに興味深い目をミハイルさんに向ける。そんな嬉々とした私の様子に、彼はどうしたものかと困惑した様子で、渋々と頷いた。

「そう…ですが、魔法ではな」

「ところでミハイルさんって異能力にお詳しいですよね？もしかして貴方にも異能力が？」

突如、この一帯が氷点下に達した。