【文スト】ゼロの起点 (ページ25)

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遊戯と毒蛇ページ25

「君があの男が口にしていた女か。確かに見目麗しい。」

沈黙の中で互いの視線が睨みあう。
片目を前髪で隠した高身長の男が、寝台の直ぐ隣の椅子に腰かけていた。

「此処は?」

此方を値踏みするかのような目を向けている。
月光を集めたかのような白銀の艶やかな髪。
夜明けを象徴する澄んだ東雲色の瞳。
長い睫毛にすっと通った鼻筋。
宝石にしたらどれほど美しいことか。
否、側に所有物として控えさせるのも悪くない。

「ここはポートマフィア。そしてこの場所は五大幹部が1人、この私Aが支配する地下室だ。」

「ご丁寧な自己紹介、感謝いたします。…さて。なんの断りの連絡もなく、私を誘拐した理由をお答え願いますか？」

儚い容姿とは裏腹な強気な瞳。
警戒心を解かないその姿もそそる。
屈服させ跪かせる姿を是非とも見てみたいが、こういう女は無理矢理では決して思い通りにはならない。
相手を納得させた上で、尚且、己の掌に転がり込む方法を考えねば。

(流石に今は死にたくない。
此処から逃げ出す方法を考えなくては。
敦君は無事だろうか。)

舐め回すように値踏みする目を辞めない男に、私は嫌悪感を抱く。これならば乱暴ではあるが、あの黒狼の方がマシだ。にしても、よく語る口だこと。
警戒心を緩ませず、また表情に出さないように思考を巡らせる。

「哀れな人虎と、あの太宰と名乗る男は囚われの身。武装探偵社というのも名ばかりだな。」

「太宰さんが？」

聞き捨てならない言葉に思わず聞き返す。
あの男が捕まった？
毒蛇のような禍々しい視線と絡み合う。

「私と賭けをしないか。」

どこまでも小馬鹿にした態度。
相手は新たな玩具を見付けたかのように、ニンマリと嗤った。恐らくは相手が己の手中に転がり込んだとでも思ったのだろう。それならば。

「取引をしましょう。
もし私が勝てば、彼らの居場所を教えなさい。」

それならば、それを利用しない手はない。
第一に、この男は扱いやすい性格をしている。
己に害を成す存在であるのならば、相手に気付かれないように、その空間そのものの支配権をこの手に握る必要がある。上手くいけば…ううん、きっと大丈夫。

怖い、怖い、怖い。
どうか声が震えませんように。

「いいだろう。
ただしお前が負ければこの首輪を着けてもらおう。」

ｶﾀｶﾀと震えそうな両手を握り締める。
決して、弱味を見せるな。目の前の男を恐れるな。
太宰さんと敦君の居場所を教えてもらい、武装探偵社に手を貸してもらおう。