梅雨の終わりに愛を唄う【弐】 (ページ7)

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参拾壱ページ7

自分でも分かっていた。

完全に鬼化が治った訳では無いと。
だから、だからなのか分からないが……

『ふー…ふー!!…ゔー……ゔー……』

階段を降りた先に、血塗れになって倒れている男性を見てポタポタとよだれが垂れていた。
食べてはいけない。食べてはいけないと分かっていても、激しい空腹が襲いかかってくる。

どぉぉおおおおん!!!!!!

『！？』

宿の建物から大きな音がして目をやると、破片と何かが飛んで来るのが見えた。

『!!』

頭上を飛んで行った物体は…無一郎。驚いて反対側に飛んで行くのを目で追った。

男性「っ…た、助けて……くれぇ…」

『！…ふー……ふー……』

駄目だ。食べたい。食べたくて堪らない。

男性「ひ！や、やめてくれええええ!!!!」

『ぅああああああう!!!!』

ーーーー無一郎sidーーーー

随分遠くまで飛ばされてしまった。ダッシュで戻っていると、遠くからナニかが見えた。暗くてよく見えない。

「……!!」

だがその物体は走りながらこっちに近ずいてきた。
黒色で長い髪。額両脇には二本の角。

「(別の鬼か…面倒臭いなぁ)霞ノ呼吸、肆ノ型……ｯ!?!?」

月明かりに照らされて見えたのは……紛れもない、A。
鬼化しているせいか牙を剥き出しにしている。

斬れない。食われる。

そう思った瞬間、僕の手を掴んで走り出した。

「A!お前…!」

『戻るよ!!私も一緒に戦う!!』

「自我が…ある」