参拾玖 ページ15
『……ん……!!』
目が覚めると、なぜか無一郎に抱き締められる形で水の中にいた。驚いたせいで息を消費してしまう。
私はまだ、鬼のままだった。
『ｯ……』
「!!」
無一郎と目が合う。だけど、目が虚ろになってきていた。無一郎の空気が尽きてきてるのだろう。どれぐらいの時間閉じ込められていたのだろうか……。それに、身体中の針。
あぁ……私のせいで。いつも、私が足でまとい。
無一郎は優しく笑いかけると、私を支える手を緩めた。
駄目。駄目よ。貴方は生きて。
生きて、幸せに暮らすの。ごめんね。私がしくじったばかりに。
だから、お詫びとして……
ｽｯ…
「ｯ!!」
私の空気を、受け取って。
ーーーー無一郎sidーーーー
玉壺に閉じ込められた水の中で、鬼になった妻を抱き抱えた。
少しでも体の温もりを確認したくて…心臓の鼓動を聞きたくて。
ずっと気絶したままのAはどこか儚くて、今にも消えてしまいそうだった。
せめて、最後に残った空気だけでも……。
僕は片方に持った刀を構えて、技を出した。
「(霞ノ呼吸、壱ノ型…垂天遠霞!!)」
勢いよく水枠を突いたけど、無理だった。
あぁ。もうダメだ。
御館様…僕はもう死ぬから、後はよろしくお願いします。
もしAが生きていたら…僕の死は知らせないで下さい。
Aは優しい子だから…きっと自分を責め立てる。
『……ん……!!』
「!!」
目を開けてくれたけれど…僕はもう無理だった。最後だと思って笑顔を見せると、彼女の腰を支えていた手から、力が抜けた。
やめてよ。そんな悲しい顔しないでよ。
目を閉じかけた瞬間…彼女の口が僕の口に触れた。
なんだろうと思ってボーｯとしていると……
ふー…
「!?!?」
空気が身体に入ってきた。
「ｯ……(駄目だ!!残された空気を僕に使うな!!A!!!!)」
心の中で訴えても、彼女はずっと空気を送り続けた。肩を掴んで引き剥がそうとしても、鬼化したAの力には適わなかった。
彼女の赤い瞳と目が合った瞬間、唇が離れた。
楽になって力が入るようになった手で、下に沈んでいく彼女の腰をしっかりと掴んだ。
『…………((ﾆｺｯ』
「(!!………守れなかった…)」
ブスッッッ!!!!
突然、目の前で刀が刺さった。
小鉄「時透さん!!死なせない!!時透さん頑張って!!僕が助けるから!!」
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作者名：見習い小説家 | 作成日時：2023年7月15日 11時
