304歩目 ページ17
「え？」
問い返した私に、老人が微笑む。
「この本を僕に託した人もまた、君とよく似た強く美しい人だったから」
「…そうかい」
ふっと笑って、私は老人から最後の１冊を受け取り、立ち上がった。
「それじゃ、私は行くよ」
「ああ。道中気を付けて、お嬢さん」
「お嬢さんはよしてくれよ。そういうガラじゃないんだ」
「だが、僕は君の名を知らない」
そう言う老人に私は静かに微笑んだ。
「A」
「君の名前かい？」
ひとつ頷くと、老人は人のよさそうな笑顔で笑った。
「なるほど……元気で、Aさん」
裏通りを出た時、やけに周囲が騒がしいことに気が付く。
(何…？随分騒がしい…)
断片的に聞こえる会話を聞く限り、どうやら広場の方で何かがあったらしい。広場に続く道を歩いていくと、うっすらと聞こえていた怒声が少しづつ大きくなってきた。
「なに、なにかあったの？」
誰かの問いかける声に耳を澄ませる。
「あー、なんか処刑台に登ってる奴がいるんだよ。ほらあそこの、"麦わら帽子"のさ…」
麦わら帽子、という言葉にハッと処刑台を見た。真っ赤なベスト、麦わら帽子、顔の傷、間違いようがない。
「ルフィ…！？」
「こら君っ！！！今すぐそこから降りなさい！！！」
「なんで？」
注意をする警官に対して、ルフィは呑気な態度だ。周囲を取り巻いている野次馬達も、ルフィと警官たちの言い合いを楽し気に見つめている。
「今すぐそこから…！！」
「まあそうカタいこと言わなくてもいいじゃない、おまわりさん」
血のついた棍棒を片手に、１人の女が倒れた警官を見下ろしている。事態を飲み込んだらしい人達が、悲鳴をあげた。それを気にする様子もなく、その女は処刑台の上を見上げた。
「探したよルフィ…！！」
「！」
「久しぶりだね…」
女がニヤリと笑う。
「まさかアタシのこの顔を、忘れたわけじゃないよね…？」
そう言って妖艶に笑う女は、お世辞抜きでかなりの美女だった。
「ルフィ、あの女はいないのかい？あんたの隣にいた、あの黒髪の小娘は…」
「Aのことか？」
「そう…Aだったねぇ…どこだい？」
「知らねェ！！それにおれはお前みたいな美女も、知らねェぞ」
どうやら彼女は私のことも知っているらしい。が、私にも覚えがなかった。記憶をたどっていると、不意に女がこちらに振り返る。
「あ…」
目が、合った。
「見つけたよ…A！！」
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りと(プロフ) - 甘党さん» あ、ありがとうございます〜！トンカチって書いてましたか…！すぐ修正しときます〜！！ (2018年11月26日 18時) (
レス) id: 193ad08974 (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - りとさん！読ませていただいてますが、一つ質問？です！322歩目の話でルフィの事をトンカチと言っていますが、正しくはカナヅチではないでしょうか？すごい細かくて申し訳ないんですけど、気づいてしまったのでとりあえずご報告を…(*'ω'*) (2018年11月26日 18時) (レス) id: de091372b0 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=･ω･=)(プロフ) - りとさん» そうでしたか！お返事ありがとうございますｍ(＿ ＿)ｍ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ミカン(=･ω･=)さん» ミカンさん、コメントありがとうございます。理由としては２つあって、１つは作者が面倒に思ったから。もう１つはない方が文字数が稼げるからです。別段意味はないですよ(*^o^*) (2016年8月18日 18時) (レス) id: 78fb09e763 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=･ω･=)(プロフ) - 質問いいですか？なぜ途中からセリフのとこに名前を付けなくなったんですか？変なこと聞いてごめんなさい！これからも頑張ってください^^ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2016年4月26日 14時
