303歩目 ページ16
「読む者を……選ぶ？」
「本を託した人がね、僕にそう言ったんだ」
老人は懐かしそうに目を細める。
「読むべき者が手に取る、と言って置いていった。あの日から２０年近く経ったが、この本を手に取ったのは君が初めてだよ」
会計を済ませた私は、もう一度しげしげとその本を見つめた。書いてある文字はやはり読めないけれど、なぜかどこか懐かしい。
「なら…いただくとするかね。ありがとう」
本を詰めた袋を抱え上げた時、老人があっと小さく声を上げる。首をかしげて彼を見ると、彼が少し心配そうな顔で私を見ていた。
「この辺りはたまに
黙って頷くと、私は外に出た。その時、私の背後に誰かが近づいてくることに気が付く。隠れながら近づいてきているようだが、気配を消すのは下手らしい。
あと数歩、というところで振り返り、私は驚いた顔をしている男の鳩尾に拳を叩き込んだ。
「うぐッ！！？」
「誰だい、あんた」
腹を押さえて呻いている男を見下ろす。海兵やその関係者ではなさそうだが、善良な市民でもなさそうだ。
「お嬢さん、１冊忘れて─」
その時、老人が店から顔を出した。その瞬間、男が立ち上がり、老人を掴む。
「下手に動くんじゃねェ！！このジジイを殺すぞ！！」
持っていた折り畳みナイフを老人の首につきつけて、男が叫んだ。やはり真っ当な人間ではなさそうだ。
「ナイフをしまいな。もっと痛い目に遭うよ」
「んだと…？」
男が目をすがめ、さらに老人の首にナイフを寄せる。ツ、と赤い物が男の首から垂れた。
「忠告は、してやったからね」
ヒュッ、と私のそばで風が音を立てた。それとほぼ同時に、男の顔と腕からパッと赤いものが飛ぶ。
「ギャアッ！！？」
男がナイフを手放し、悲鳴を上げた。その隙に、唖然としている老人を男から引き離した。
「大丈夫かい？」
「あ、ああ…」
驚いている老人を男から庇うように後ろに隠すと、私は悲鳴を上げている男を睨んだ。
「失せな」
私の言葉を聞いた男が、真っ青な顔で弾かれたように立ち上がる。そのまま悲鳴を上げて走り去っていく男にひとつ息をつき、老人を振り返った。
「首、平気かい？」
「あ、ああ。これくらいなら…」
老人は驚いた顔のまま、私を見て頷いた。
「…人を選ぶ本とは、本当だったみたいだ」
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りと(プロフ) - 甘党さん» あ、ありがとうございます〜！トンカチって書いてましたか…！すぐ修正しときます〜！！ (2018年11月26日 18時) (
レス) id: 193ad08974 (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - りとさん！読ませていただいてますが、一つ質問？です！322歩目の話でルフィの事をトンカチと言っていますが、正しくはカナヅチではないでしょうか？すごい細かくて申し訳ないんですけど、気づいてしまったのでとりあえずご報告を…(*'ω'*) (2018年11月26日 18時) (レス) id: de091372b0 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=･ω･=)(プロフ) - りとさん» そうでしたか！お返事ありがとうございますｍ(＿ ＿)ｍ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ミカン(=･ω･=)さん» ミカンさん、コメントありがとうございます。理由としては２つあって、１つは作者が面倒に思ったから。もう１つはない方が文字数が稼げるからです。別段意味はないですよ(*^o^*) (2016年8月18日 18時) (レス) id: 78fb09e763 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=･ω･=)(プロフ) - 質問いいですか？なぜ途中からセリフのとこに名前を付けなくなったんですか？変なこと聞いてごめんなさい！これからも頑張ってください^^ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2016年4月26日 14時
