302歩目 ページ15
「うんうん、こうするとやっぱり可愛いんじゃない！」
満足げなナミに小さく頷いて、私は両手に一杯になった紙袋を見下ろした。服と化粧品、その他諸々は、私には少し多すぎる。
「荷物、置いてくるよ…」
「そ。なら、ここからは別行動ね！」
そう言って楽しそうに去っていくナミに、私はほっと息をついた。
(やっと…本が買える…)
今の私が持っているものは、夢のきっかけとなった冒険小説だけだ。飽きてしまったわけではないが、そろそろ新しい物も欲しい。
(この道…)
ふと大通りから逸れる道が気になった。先は薄暗い裏路地だ。人酔いし始めていた私は、人ごみから逃れるようにその道に入った。
(…あれは？)
暗い道の先に、本の書かれた看板が揺れていた。どうやら古書店らしい。そこに惹かれるように、私は暗い店の中へ足を踏み入れていた。
「…おや、若い女性が来るとは珍しい」
不意にしわがれた声が聞こえてきた。山の如く積み上がった本の影から、小柄な老人が顔を出す。人のよさそうな笑みが印象的な人だった。
「少し古いが、良い本ばかり集めたつもりだよ。ゆっくり見ていってくれ」
「…ありがとう。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
棚に視線を移し、何冊かを取り出してはパラパラとページをめくる。どれも年季の入ったものばかりだ。中にはもうここにしかないのではないか、というものすらある。
「…」
しばらくして、私は厳選したものを重ねて老人の前に置いた。
「…おや」
背表紙を見ていた老人の動きが、不意に止まった。
「君には…この文字が読めるのかい？」
「え？」
老人が本の束から抜いたのは、何の変哲もない黒い皮の本だった。背表紙には知らない文字が刻まれている。ただ、こんな本を入れた記憶はない。
(まあ、いいか)
私は微笑んで、老人を見た。
「買うよ。読めない文字だけど、解読する時間は山ほどあるんでね」
「そうかい」
そう言って、老人は微笑んだ。
「ふふ、懐かしいな…。この本はね、海賊王が処刑された日、彼のクルーが僕の店に置いていったものなんだ」
老人が優しく背表紙を撫でる。
「大切なのかい？なら、もらえないよ」
「いいや、本は読まれてこそ意味がある。生涯かけても読めない僕では、宝の持ち腐れだ」
「いや、私だって読めるかは…」
「なに、時間はあるんだろう？」
老人がからかうように笑った。
「それに、この本は…読む者を選ぶんだそうだ」
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りと(プロフ) - 甘党さん» あ、ありがとうございます〜！トンカチって書いてましたか…！すぐ修正しときます〜！！ (2018年11月26日 18時) (
レス) id: 193ad08974 (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - りとさん！読ませていただいてますが、一つ質問？です！322歩目の話でルフィの事をトンカチと言っていますが、正しくはカナヅチではないでしょうか？すごい細かくて申し訳ないんですけど、気づいてしまったのでとりあえずご報告を…(*'ω'*) (2018年11月26日 18時) (レス) id: de091372b0 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=･ω･=)(プロフ) - りとさん» そうでしたか！お返事ありがとうございますｍ(＿ ＿)ｍ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ミカン(=･ω･=)さん» ミカンさん、コメントありがとうございます。理由としては２つあって、１つは作者が面倒に思ったから。もう１つはない方が文字数が稼げるからです。別段意味はないですよ(*^o^*) (2016年8月18日 18時) (レス) id: 78fb09e763 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=･ω･=)(プロフ) - 質問いいですか？なぜ途中からセリフのとこに名前を付けなくなったんですか？変なこと聞いてごめんなさい！これからも頑張ってください^^ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2016年4月26日 14時
