297歩目 ページ9
「…？」
人の声に目が醒めた。
(外が騒がしい…)
何か争っている…というわけではなさそうだ。どちらかというと、楽しそうな声だと思う。その声に誘われるように、私は診療所を出た。
「！」
ぱっと視界に鮮やかな紙吹雪が映った。島中に光が灯され、人々の歌う声が聞こえる。がらんとしていた町には、多くの人が集まり、歌い、踊っていた。
「…よかった」
幸せそうな人々の顔に微笑んでいた。自分がしたことが、この活気を取り戻す助けに少しでもなれていたなら、嬉しい。
「A！」
誰かが私の名を呼んだ。周囲を見まわすと、人ごみをかき分けてナミがこちらに歩いてきているのが見える。
「もう起きててもいいの？」
「うん」
そう言うと、ナミがいきなり私にジョッキを押し付けた。
「…？ありがとう」
受け取って口をつけると、みかんの香りと甘味が口の中に広がった。
「みかんのお酒…？」
「…嫌いだった？」
「いや、好きさ」
その時、ナミがいきなり頭を下げた。
「ごめん！」
「え？」
「あんたのこと、"化け物女"なんて…酷いこと、言って…」
「…なんだい、そんなことかい？」
「"そんなこと"って…！！」
顔を上げたナミに、私は笑った。
「そんなこと、いちいち気にしないよ。慣れてるし、まあ、事実さ」
「A…」
ほら、と私は、深刻な顔をするナミの背を叩いた。
「辛気臭い話はこれでおしまい！せっかくの祭りなんだ、楽しもう！ほら、あんたも笑って！」
ナミの頬を押し上げると、ナミが戸惑いつつも笑った。その時、ポンと誰かが私の肩を叩く。
「嬢ちゃん、起きたか！」
「待ってたぜ、あんたもおれ達の町の恩人だからな！」
感謝する人たちの波に吞まれ、私は祭りの中心に流されていく。ジョッキの中身は気が付いたら空になっていた。
「嬢ちゃん、踊ろう！」
手を引かれるままに、踊りの輪の中に入った。
「Aすわァ〜〜〜ん♡」
サンジを見つけるより早く、サンジの手が私の手を掴んだ。そのまま流れるように踊り始める。
「よかった♡もう大丈夫そうだ」
「おかげさまで。あんたも元気そうだね」
「もう平気さ！…というわけで、踊ってくれる？」
「もう踊ってる」
ケラケラと笑うとサンジも笑った。
その後、音楽が鳴る中、踊って、歌って、大いに飲んだ。
「Aさん、大丈夫…！？」
そのサンジの声を最後に、私の記憶がプツンと途切れた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 247人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと(プロフ) - 甘党さん» あ、ありがとうございます〜！トンカチって書いてましたか…！すぐ修正しときます〜！！ (2018年11月26日 18時) (
レス) id: 193ad08974 (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - りとさん！読ませていただいてますが、一つ質問？です！322歩目の話でルフィの事をトンカチと言っていますが、正しくはカナヅチではないでしょうか？すごい細かくて申し訳ないんですけど、気づいてしまったのでとりあえずご報告を…(*'ω'*) (2018年11月26日 18時) (レス) id: de091372b0 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=･ω･=)(プロフ) - りとさん» そうでしたか！お返事ありがとうございますｍ(＿ ＿)ｍ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ミカン(=･ω･=)さん» ミカンさん、コメントありがとうございます。理由としては２つあって、１つは作者が面倒に思ったから。もう１つはない方が文字数が稼げるからです。別段意味はないですよ(*^o^*) (2016年8月18日 18時) (レス) id: 78fb09e763 (このIDを非表示/違反報告)
ミカン(=･ω･=)(プロフ) - 質問いいですか？なぜ途中からセリフのとこに名前を付けなくなったんですか？変なこと聞いてごめんなさい！これからも頑張ってください^^ (2016年8月18日 18時) (レス) id: 86f8ae39c8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りと | 作成日時：2016年4月26日 14時
