127歩目 ページ30
「金もそうだが、もうひとつ私は…"平穏"が欲しいのです」
クロが苦笑する。
「ここで３年かけて培った村人からの信頼はすでに、なんとも笑えて、居心地のいいものになった」
クロの言葉は本心らしい。その顔は今までと打って変わって穏やかだった。
「その"平穏"とあなたの"財産"を手に入れて、初めて計画は成功する」
「…！」
「つまり村に海賊の攻め入る"事故"と、遺書を残してあなたが"死ぬこと"は、絶対なのです」
「！！」
カヤさんの顔が凍りついた。
「逃げろカヤ！！そいつにゃ何言っても無駄なんだ！！！お前の知ってる執事じゃないんだぞ！！！」
カヤさんがクロに何かを向けた。
「…！」
拳銃だった。カヤさんはギュッと拳銃を握りしめて、引き金に指をかけている。
「村から出て行って！！！」
「なるほど…」
クロの表情は変わらない。むしろ落ち着いている。
「この３年であなたもだいぶ立派になられたものだ…」
カヤさんの顔に一瞬迷いが浮かんだ。
「憶えていますか？３年間いろんなことがありましたね」
「！」
「あなたがまだ両親を亡くし床に伏せる前から、随分長く同じ時を過ごしました」
カヤの手が震える。今までの事を思い出しているのだろう。
「町まで出かけたり…あなたが熱を出せばつきっきりで看病を…。共に苦しみ、共に喜び、笑い…私はあなたに尽くしてきました！」
カヤさんの目に涙がたまる。カヤさんにとっては、クロ…いやクラハドールとの思い出はどれも大事なものなんだろう。
「夢みるお嬢様に散々つきあったのも、それに"耐えた"ことも…」
「！！」
カヤさんがはっと息を吞む。
「全ては貴様を殺す今日の日のためっ！！！」
「！！！！」
カヤさんの目から涙があふれた。
「かつてはキャプテン・クロを名乗ったこのおれが、ハナったれの小娘相手にニコニコへりくだって、心ならずもご機嫌とってきたわけだ…」
カヤさんは唇を噛み締めている。カヤさんにとって大事な人に裏切られ、楽しかった幸せな思い出を否定された。その苦しみと悲しみは想像よりずっと辛いものだろう。
「わかるか？この屈辱の日々…」
カヤさんの手は力なくたれ、銃は音を立てて地面に落ちた。そのままカヤさんも膝から崩れ落ちる。素早く彼女の体を支えると、その体は震えていた。
「クロォォォおーっ！！！！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りと(プロフ) - パピコさん» ありがとうございます( ´ ▽ ` )ﾉ大好きと言ってもらえて本当に嬉しいです(^^)まだまだ未熟な文ではありますが、これからも読んでいただけると嬉しいです^o^ (2014年7月22日 19時) (
レス) id: ae23440109 (このIDを非表示/違反報告)
パピコ - この作品大好きです。これからも応援してます。 (2014年7月22日 18時) (レス) id: 743ef9a041 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - ミルフさん» 面白いと言っていただけて本当に嬉しいです！少しでも多く、少しでも面白い話を更新出来るように頑張ります！ (2014年6月9日 0時) (レス) id: ae23440109 (このIDを非表示/違反報告)
ミルフ - 面白かったです！続き楽しみにしているのでがんばってください！ (2014年6月7日 18時) (レス) id: 4078b7ab36 (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - キャベツさん» ありがとうございます(^^)そう言って頂けて本当に嬉しいです（≧∇≦）これからも少しでも面白いと思って頂ける様に頑張ります( ´ ▽ ` )ﾉ (2014年5月18日 18時) (レス) id: ae23440109 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りと | 作成日時：2014年4月29日 18時
