748歩目 ページ7
『ッ…』
言葉を発することすらできず、ただ叔父の顔を見上げる私に彼は僅かに目を細めた。
「死人を見たかのような顔をしているな」
それもそうか、と彼は吐き捨てるように言った。
「あの日、私も含め何もかもが死んだはずだと思っていたのだろう？まあ、あながち間違ってはおらぬ。我らとお前を遺し、皆死んだわ。お前のせいでな」
ぐっと唇をかみしめる。言われずともわかっていることだった。あの日の事を、私とて一度も忘れたことはない。忘れたくても、忘れられるものでもない。うつむいた私の前に、さらに彼が近づいたのが見えた。驚きと恐怖に顔をあげた瞬間、彼の白い手が私の髪を無造作につかむ。
「相も変わらず、穢れは落ちぬまま…か」
忌々し気に口元をゆがめると、髪を掴んで私を地面に引き倒した。呻く私に、彼はやはり冷たい目を向けているままだ。何も言えないまま、彼を見上げていると、無表情のまま彼の足が振り上げられた。踏みつけられる、と咄嗟に頭を抱える。
その瞬間、石と石が触れ合うような音がひとつ響いた。その瞬間、叔父上の動きが止まる。
「そのあたりにしておきますように、ラブノス様」
恐る恐る開いた目に、壁際から一人の男が進み出るのが見えた。深くフードを被っているせいで顔は見えないが、白いローブの下から同じく白い義足がのぞく。一歩進むたびにゴトンと音を立てるそれが、さきほどの音の主だと気が付いた。
ラ「…モナクか」
叔父上は足を降ろした。そして、モナクと呼ばれた男から、叔父上の眼が私に向いた。
ラ「12年前、お前は過ちを…否、大罪を犯した。そのために、何の罪も無き島民たちの多くが死んだ。そこに控えるモナクも片手片足を失った」
『…』
ラ「本来ならば、お前の起こした罪は"取返しのつかぬ"ことだということは承知しているな？」
私は体を起こすと、彼の前に頭を垂れた。
『…はい』
ラ「では、その罪を"無かったこと"にできるなら、お前はどうする？」
12年前のことを忘れたことは一度もない。何度、償いたいと願ってきたかもわからない。それを、無かったことにできるというのか。
『私に…できる事ならば、喜んで致しましょう』
叔父上がゆっくりと身をかがめ、私の顔を掴んだ。暗い目が試すように私を見ている。
ラ「よかろう。では、ひとつだけ答えよ」
ラ「その結果、お前が死ぬとしても…その決意は揺らがぬと誓えるか？」
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りと(プロフ) - みずいさん» みずいさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり、申し訳ありません<(_ _)>そう言っていただけて嬉しいです！今後も不定期の更新になりますが、楽しんでいただければ幸いです♡(*´･ω･) (2022年5月31日 22時) (
レス) @page43 id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
みずい(プロフ) - オリジナル長編が面白すぎる…！！更新楽しみにしています！ (2022年5月22日 0時) (レス) id: 8876da800a (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - そのかさん» そのかさん、コメントありがとうございます！そういっていただけて、とても更新の励みになります！あまりにものんびりとした更新ではありますが、これからも気長にお楽しみいただければと思いますm(__)m (2022年3月27日 1時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
そのか(プロフ) - すごく面白くて好きです！次の更新楽しみにしてます！ (2022年3月22日 11時) (レス) @page30 id: 35e12bb70c (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 黒砂糖パフェさん» 黒砂糖パフェさん、ありがとうございます！そう言っていただけて、とても嬉しいです！のんびりとした更新ですが、これからも読んでいただければ幸いですm(__)m (2022年2月2日 2時) (レス) @page21 id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2021年12月26日 18時
