766歩目 ページ25
『…。』
馬車からおろされた私は、ふとこれまで来た道を振り返った。美しい白い街並みのように見えた街はほとんどが廃墟と化していたし、馬車の通る道は整備されていないのかガタガタと揺れた。長年、この場所が整備されていないらしいことは、なんとなくわかった。
(人は…いないから…)
美しい星が煌めく夜空の下に、目立つ明かりはない。街の方は何もかもが眠ってしまったかのように、音も命の気配もしなかった。かつては遠くからでも、人々の灯す火の光がいくつも見えたのに。
(それもそう、よね…全て、私が"奪って"しまった)
ハ「…A様」
『…はい』
私をいさめる声に頷き、私はゆっくりと目の前の塔へ振り返った。ずっと遠くに見えていた、美しい白い塔に、私は今から向かう。精巧な彫り物が施された金の飾りが、私の手足で場違いなほど軽やかな音を立てた。
(だから、私はここに来た…)
私はふっと息をつき、しっかりと足を踏み出した。シャラン、と軽やかな音がする。
ハ「あなたのお仲間が、目覚めたようです」
不意を衝くように、ハイプノがそう言った。思わず、ほっと息をつきそうになったが、それを住んでのところで呑み込む。私は暗い入り口を見据えたまま、口を開いた。
『彼らはもう私の仲間ではありません。すでに、私は"未練"をたったのだから』
私の背後に、私を着付けた女性二人が控えた。その目もやはり、ハイプノと似てどこか険しい。
ハ「では、参りましょう」
私の前を歩き出したハイプノに続き、私は塔の中へと足を踏み入れた。明かりは青い炎の松明だけのせいか、かなり暗い。
ハ「ここからは、これを」
何を、と問おうとする私の腕に、いきなり焼けるような痛みが走った。
『っ！！？───う゛ぅ…！！』
ハ「海楼石の枷だ」
身体の力が抜け、その場に崩れ落ちる。そんな私を、手錠の鎖でハイプノが持ち上げた。
『…！』
ハ「ラブノス様の言いつけで、ここまで丁寧に扱ってきたが…まだおれ達は疑っている」
ぐいとハイプノが私を引きずる。擦れた膝に血がにじんだ。
ハ「お前が本当に改悛し、おれ達のために生贄になる気があるのか、な。だから、お前が証明してみせろ」
ハイプノの眼が上を向いた。
ハ「お前の行く先はこの塔の頂上」
ハイプノは次に塔の壁を見た。そこには急な石段が備え付けられている。登れ、という事らしい。
ハ「歩け。一人で、お前の罪と向き合いながら」
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りと(プロフ) - みずいさん» みずいさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり、申し訳ありません<(_ _)>そう言っていただけて嬉しいです！今後も不定期の更新になりますが、楽しんでいただければ幸いです♡(*´･ω･) (2022年5月31日 22時) (
レス) @page43 id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
みずい(プロフ) - オリジナル長編が面白すぎる…！！更新楽しみにしています！ (2022年5月22日 0時) (レス) id: 8876da800a (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - そのかさん» そのかさん、コメントありがとうございます！そういっていただけて、とても更新の励みになります！あまりにものんびりとした更新ではありますが、これからも気長にお楽しみいただければと思いますm(__)m (2022年3月27日 1時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
そのか(プロフ) - すごく面白くて好きです！次の更新楽しみにしてます！ (2022年3月22日 11時) (レス) @page30 id: 35e12bb70c (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 黒砂糖パフェさん» 黒砂糖パフェさん、ありがとうございます！そう言っていただけて、とても嬉しいです！のんびりとした更新ですが、これからも読んでいただければ幸いですm(__)m (2022年2月2日 2時) (レス) @page21 id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2021年12月26日 18時
