758歩目 ページ17
(いざページを前にすると、難しいな…)
真っ白なページに何を遺そう、と思案する。言いたいこと、伝えたいことはたくさんあって、全てを書いてしまったら、このページどころかノートすら足りなくなるだろう。それに、そんなに長々とメッセージを遺すなんて、なんだかかっこ悪い。
迷って、考えて、ようやく書いたものは、短いものだった。
─今までたくさんの楽しい時間を、ありがとう。そして、さようなら。
書いている途中で、視界が霞んだ。ペン先は震えていたし、インクはぽたりと落ちた「水」に滲んでしまった。それでも、この言葉のすべてに私の思いがある。不格好な文字だし、味気もないけれど。
『…これも、お願い』
持っていたイヤリングとネックレスを開いたノートの上に置き、渡す人の宛先も書いた。儀式が成功すれば、こんなものは消えてしまうとはわかっている。だけど、自分の最後くらいちゃんと整理しておきたいと思った。
大きく息をつき、私は目元を拭った。そして、もう一度甲板に出た。まだみんなは眠ったままだ。きっと、私が儀式の場に行くまで目を覚ますことはないのだろう。
(…さあ、これで最後)
甲板で眠るみんなのそばに歩いていく。足は今まで以上に重いし、喉は苦しい。目の前の視界だってずっと霞んでて、鼻の奥もツンとした。それでも、私は終わらせなくてはいけない。待ち受ける未来に先はないけれど、それを受け入れると決めたのだから。
『ロビン』
甲板に倒れ、長い黒髪が広がった彼女の傍らに膝をつく。
『今更こんなこと言っても、遅いかもしれないけど…私、あなたと仲良くなれる気がしてきてたんだ。空島で私を何度も助けてくれたし、思っていたより嫌な人じゃないって気が付いたの』
静かに片手を握った。
『…今まで、ありがとう。これからみんなをよろしくね。あなたの知識や冷静さが、みんなを正しい道へと導いてくれると思うから』
この船のクルーになった彼女とは、いろんな話をした。いつもミステリアスだし、とらえどころのないところもあった。時に私の過去を知っているというようなそぶりも見せたけど、それをみんなに言いふらすことはしなかった人だった。そんな彼女が好きだった。彼女はきっとそれを認めないだろうけど、私は彼女のやさしさなのだと思ったから。誰かに見せる事に尋常じゃない勇気がいる"何か"を抱えていることの意味を、わかってくれている気がして
『どうか、幸せな道を選んでね』
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りと(プロフ) - みずいさん» みずいさん、コメントありがとうございます!お返事が遅くなり、申し訳ありません<(_ _)>そう言っていただけて嬉しいです!今後も不定期の更新になりますが、楽しんでいただければ幸いです♡(*´・ω・) (2022年5月31日 22時) (レス) @page43 id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
みずい(プロフ) - オリジナル長編が面白すぎる…!!更新楽しみにしています! (2022年5月22日 0時) (レス) id: 8876da800a (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - そのかさん» そのかさん、コメントありがとうございます!そういっていただけて、とても更新の励みになります!あまりにものんびりとした更新ではありますが、これからも気長にお楽しみいただければと思いますm(__)m (2022年3月27日 1時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
そのか(プロフ) - すごく面白くて好きです!次の更新楽しみにしてます! (2022年3月22日 11時) (レス) @page30 id: 35e12bb70c (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 黒砂糖パフェさん» 黒砂糖パフェさん、ありがとうございます!そう言っていただけて、とても嬉しいです!のんびりとした更新ですが、これからも読んでいただければ幸いですm(__)m (2022年2月2日 2時) (レス) @page21 id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りと | 作成日時:2021年12月26日 18時