742歩目 【Side.???】 ページ1
ロジャーが海を荒らしまわり、数々の偉業を成し遂げるよりも昔から、船乗りたちの間には一つの伝説が語り継がれてきた。
─この広い世界のどこかに"ウトピア"という島がある。
─その島は一度見れば忘れられないほどに美しい島で、辿り着くことができるのは"神に選ばれた"かのような豪運の持ち主だけ。
─どの海図にもどの地図にもその島の存在はなく、どこにその島があるのかすらわからない幻の島。
─その島には"神の愛し子"と呼ばれるものが暮らしている
─姿かたちは人間だが、生きる時間ははるかに長く、人間には無い力を持っている
─そんな彼らの求めに応じれば、その者は幸せになれる
─そんな彼らの求めに応じなければ、その者は生きて島を出ることはできない
その幻の島を求めて、多くの人間が海へ挑んだ。ある者はその島を見つけようと海へ出たっきり、生涯陸にはもどらなかった。ある者はその島の存在を疑い、夢追い人の愚かな妄想と決めつけた。様々な噂がたったが、それでもなお多くの冒険家がその島の発見に挑んだ。
ある時、一人の冒険家がその島に辿り着いたという。生きて帰って来た彼は、その島でもらったという金銀財宝をたっぷり船に積んで戻った。彼に、その当時の王はウトピアの場所を案内するように命じた。しかし、冒険家は口をつぐみ、黙って首を横に振るばかりだったという。
─王よ、恥ずかしながら
王の糾弾に耐えかね、冒険家は恥を忍んだ様子で口を開いた。
─ウトピアに自分がどのように辿り着いたのか、自分でもわからないのです
─乗組員たちも、私でさえも全員が眠ってしまいました
─そして、目が覚めるとそこは美しい島だったのです
この話を聞いた王は賢明だった。その島は"島に選ばれた者"しかたどり着けないのだろうと結論付け、冒険家からウトピアの話を聞くことで満足することにした。
しかし、冒険家は何も話さなかった。美しい島だというばかりで、何がいたのか、どんな風に美しいのかを語ることはなかった。そのことに気分を害した王は、それ以上聞くのはやめ、冒険家はウトピアに辿り着けなかったのだということにした。
この冒険家のように、ウトピアに辿り着いたという人間は稀に現れたが、島の名前と"美しい場所"ということは述べられても、どのように辿り着いたのか、どういう場所だったのかということを具体的に言える者はいなかった。
12年前までは。
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りと(プロフ) - みずいさん» みずいさん、コメントありがとうございます！お返事が遅くなり、申し訳ありません<(_ _)>そう言っていただけて嬉しいです！今後も不定期の更新になりますが、楽しんでいただければ幸いです♡(*´･ω･) (2022年5月31日 22時) (
レス) @page43 id: 4416da2808 (このIDを非表示/違反報告)
みずい(プロフ) - オリジナル長編が面白すぎる…！！更新楽しみにしています！ (2022年5月22日 0時) (レス) id: 8876da800a (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - そのかさん» そのかさん、コメントありがとうございます！そういっていただけて、とても更新の励みになります！あまりにものんびりとした更新ではありますが、これからも気長にお楽しみいただければと思いますm(__)m (2022年3月27日 1時) (レス) id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
そのか(プロフ) - すごく面白くて好きです！次の更新楽しみにしてます！ (2022年3月22日 11時) (レス) @page30 id: 35e12bb70c (このIDを非表示/違反報告)
りと(プロフ) - 黒砂糖パフェさん» 黒砂糖パフェさん、ありがとうございます！そう言っていただけて、とても嬉しいです！のんびりとした更新ですが、これからも読んでいただければ幸いですm(__)m (2022年2月2日 2時) (レス) @page21 id: b238753ec9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りと | 作成日時：2021年12月26日 18時
