620歩目 ページ8
ク「おめェら、こっちへ来な」
そう言って、外に出ていたらしいクリケットが私たちを呼んだ。
ク「…いいか、おめェら。まず…『空島』についておれの知ってることを全て教えてやる」
仁王立ちでそう言って、クリケットはこちらを見回した。
ク「何もかも不確かなことだが、信じるかどうかはおめェら次第─」
ル「うん、信じる」
ウ「早ェよ」
あっさりと言ったルフィの頭をウソップが叩く。私の後ろではゾロが胡座をかいて眠っているらしく、いびきが聞こえてきている。クリケットは真面目な顔をしているが、流れる空気は拍子抜けするほど穏やかだ。
ク「この辺の海では、時として真昼だってのに1部の海を突然『夜』が襲う奇妙な現象が起こる」
ル「あった！！おう！！あったぞそれ！！なあ！！」
ウ「おう！！夜が来て、そんでその時怪物が現れたんだ！！」
ルフィ達の言葉に私もナミも頷いた。
ク「巨人のことか…あいつらがどこからやって来るかって
クリケットはそう言ってタバコの煙を吐く。
ク「突然来る『夜』の正体…それは極度に積み上げられた雲の影だ」
ナ「積乱雲のこと…？雲がかかる程度で出来る闇じゃなかったわよ。ね、A」
ナミの言葉に深く頷いた。ただの積乱雲の大きくなったもの程度ではああはなるまい。
ル「おっさん馬鹿だなー。雲が多い日は『くもり』になるんだぞ」
ウ「ああ、くもりだ！」
チ「くもりだ！」
ク「黙ってきけィ！！」
クリケットはそう一喝して咳払いした。
ク「『積帝雲』…そう呼ばれる雲がある」
『…？』
ナミの方に視線を向けると、ナミも軽く肩をすくめる。
ク「空高く積み上がるもその中には気流を産まず雨に変わることも無い……そいつが上空に現れた時、陽の光さえ遮断され、地上の『昼』は『夜』にも変わる。一説には『積帝雲』は何千年何万年もの間、変わることなく空を浮遊し続けた『雲の化石』だという…」
そこまで聞いていたナミが急に身を乗り出した。
ナ「積み上げても気流をうまない雲！？そんな馬鹿なこと……」
ク「あるわけがないと思うのも自由。おれは別に信じろと言ってるわけじゃない」
ル「不思議雲ってことか！」
ク「そうなるな。未だ解明されねェ雲だ」
チョッパーが感嘆の声を上げる。
ク「いいか」
クリケットがルフィを指さした。
ク「『空島』がもし存在するというならば、そこにしか可能性はない」
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作者名：りと | 作成日時：2019年5月15日 11時
