私はお前と海へ出る14(空島編前編) (ページ1)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:72,112 hit

613歩目ページ1

『え？…！ちょ、ちょっと！？』

　クリケットの手から銃が落ちる。と同時に、苦しげに顔をゆがめたクリケットがうめき声を上げ始めた。

『クリケット！！』

　尋常じゃない様子に慌てて駆け寄ると、苦しげに呻くクリケットはついに耐えきれなくなったのか、バタリとその場に崩れ落ちた。

『チョッパー、こいつを中に運ぶから診察頼む！』

チ「わかった！」

クリケットの蒼白になった顔に焦りを感じつつ、私は彼を抱え上げた。

チ「タオルをもっと冷やしてきて。窓は全開に！」

　チョッパーの指示通りに窓を開ける。

『チョッパー、この人いったいどうしたんだ？』

チョッパーの処置のおかげか少し顔色が良くなった彼を見た。

チ「潜水病だよ」

『潜水病？』

ル「このおっさん、病人なのか？」

チ「うん。ダイバーがたまにかかる病気さ」

　そう言ってチョッパーが、不思議そうにクリケットの顔を覗き込む。

チ「本当は持病になったりする様なものじゃ無いんだけど」

『で…どんな病気なんだ、それ？』

チ「海底から海上に上がる時、減圧が原因で体の中のある元素が溶解状態を保てずにその場で気泡になるんだ。気泡は血管や血管外で膨張するから、血流や筋肉、関節に障害を与える」

ル「─あァ、怪奇現象ってわけか」

　ルフィは飽きてしまったのか、話がよくわからなかったのか、窓の外をのんびりと眺めている。

チ「この人はその気泡が体から消える間もないくらい、毎日毎日無茶な潜り方を続けてきたんだ……」

ナ「一体なんのために……？」

　ナミが怪訝そうな顔でクリケットの寝顔を見下ろした。

『わからないが、何か余程大事な用件なのかもしれない。例えば、大切なものが海の下にあるとか……』

　でも、もチョッパーは心配そうにクリケットを見つめる。

チ「危険だよ。潜水病は場合によっては……死に至る病だ」

　そうか、と頷いてチラリと壁にかけられた写真に目をやる。

(ん？)

　その写真の中には左右に見覚えのある顔、そして中心にクリケットが、全員笑顔で写っていた。

(この顔、確か……)

あと少しで思い出せる、そんな時に突然外からこちらに走ってくる足音がした。

「「おやっさん！！！大丈夫かァ！！！」」