618歩目 ページ6
ク「おれの噂を聞いて押しかけてきた。『ノーランドの黄金は絶対あると思うんだ』ってな」
クリケットはそう言うと、ちらりと外にいる2人に視線を向けた。
ク「ここらの海は深いんだ。暗く冷たい海中ではより一層の孤独が付きまとう。おれは1人で来る日も来る日もただ潜って探す日々……」
外でやいのやいのと騒いでいる二人を見つめるクリケットの目は優しかった。
ク「そんな生活の中にズカズカと入り込んできて、勝手におれの手下になって暴れ回りやがる。ああいう一途なバカには─」
クリケットは少し言葉を置いて、ゆっくりと煙を吐いた。
ク「正直、救われるんだ……わかるか……？」
そう言うクリケットの表情は少し柔らかい。あの二人が好きなのだろう、とそう思う。
ウ「わかるぜ、そうだよな……本当の同志ってのはただそれだけで心強く……」
グズグズと鼻を啜りながらウソップは腕で涙を拭った。ウソップ海賊団のことを思い出しているのだろう。
ル「まーでもさるの話は置いといてよ」
ウ「じゃ聞くな！！歯ァくいしばれ！！」
ゴツン、とウソップがルフィに拳骨を落とす。しかし、ルフィはあっけらかんとした様子だ。
ル「だから…！！」
ウ「あ！？」
怪訝そうな目を向けるクリケットにルフィが焦れったそうにウソップを押しのけた。
ル「おれは『空島』に行きてェんだよ、おっさん！！」
ルフィの怒鳴り声に、クリケットは何も言わずに口角を上げる。
ク「…フフフ、せっかちな奴だ…。だから話してやったろ、『空島』の証言者はその『嘘つきノーランド』。こいつに関わりゃおめェらもおれと同じ笑い者だ」
そう言うと、クリケットは古い表紙の本を1冊取り出した。
ル「え！？そいつも空島に行ったことあんのか！？」
ク「残念ながら行ったとは書いてねェが……」
ナ「航海日誌……まさかノーランド本人の！？」
ク「そうさ。」
劣化で張り付いたページを丁寧に捲りながら、クリケットは目的のページを開いた。
ク「その辺読んでみろ」
ナミが放り投げられたノーランドの航海日誌を慌ててキャッチする。ほっと1つ息を吐くと、ナミはページに視線を向けた。その目は、財宝と聞いた時の眼の輝きとは違う輝きで満ちていた。好奇心に輝く目だ。
ナ「すごい…400年前の日誌なんて……」
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作者名：りと | 作成日時：2019年5月15日 11時
