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▣ 過去
※一部暴力的表現を含みますので、苦手な方はブラウザバック推奨。
彼女の人生が狂ったのはいつからだったか。
ごく普通の学生。ごく普通の日々。ごく普通の家庭。
少し探求心が強い事以外は何の取り柄も無かった少女は一体いつ道を踏み違えたのだろう。
高校三年生の春頃、彼女は突如として両親を失った。
交通事故だと聞いている。細かな詳細は彼女には語られなかったが、乗用車同士がぶつかり両親ともに即死だったという。そのショックはかなりの物ではあったようだが、彼女はどうにか平然を繕って通常通りに登校していた。
「薄情だ」という声も親族からはあがったが、彼女はそれより他に登校せねばならない理由があった。
その事故の後の事だっただろうか、彼女の味覚がおかしくなっていったのは。
彼女には仲の良い男友達が居た。否、言い換えれば変わり者の彼女の唯一の友達が彼であった。彼は文学が好きで、決して目立つ方ではなかったがどこか儚く独特の雰囲気を持った不思議なニンゲンだった。
Cakeであった彼は昔Forkに襲われた経験から人間不信に陥っている。その経験から体の一部を失っており、差別的な扱いをされている事も薄々気がついていた。
彼女は周りの言葉も「くだらない」と一蹴し、彼と仲良くしていたが、ある日彼は彼女に心の内を打ち明ける。
「死んでしまいたい」
事故の起きる少し前の事だ。
その言葉は彼女にとって重く圧し掛かり、大きな衝撃を与えた。
彼女がどうしても学校に行かねばならない理由は彼を一人にさせない為であった。
彼女はその後も彼と話し、何度も引き留めるが彼の心は揺るがぬまま。
そして明くる日、彼らはこんな会話をした。高校三年生の六月の事だった。
「君、何を食べても味を感じていないよね」
「あぁ、少し前から。 風でもひいたかもしれないな」
「もしかしたら、君もForkに」
「はは、そんな訳が無いだろう。 君の人間不信もそこまで来ると困るな」
「いや、寧ろもし君がForkならーー」
僕を余さず喰べてはくれないか。
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