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なんで砕いたチョコレートと湯をレンジで温めて冷やしたらお菓子になるんだよ、と言いたい気持ちを抑える。
とんでもなく難しそうな工程の並んでいたレシピとは打って変わって単純な分、アタシでも何をしているのかくらいは分かった。
「あっツ！？」
「レンジから取り出す時は気を付けた方が良い」
「……先に言ってくれヨ」
「すまない。 音が鳴った瞬間に取りに行くとは思っていなくてな」
「せっかちデ悪かったナ」
想像以上に熱かったボウルをミトンを使って取り出して、氷の入ったさらに大きいボウルに浮かべる。何の為に温めたのだろうと不思議に思うが、どうやらこの温度の変化が食感に繋がってくるとか何だかを言っていた。
「なんか量多くないカ」
「それだけあれば、全員に配れるだろう。 まぁ、元々入っていた湯と1:1にしたかった影響でその量になったというのが正しいが」
「アタシ、全員に配るつもり無かったけド」
「折角の機会だから配ってもいいんじゃないか。 貰った奴もきっと喜ぶだろう」
「ンー……ま、良いけド。 なんか渡すだけは癪だシ、今度対面練習でも付き合ってもらうカ」
最近誘うと断られることが多いんだよな、なんて考えながら、無心で混ぜ続ける。
時々ガシャンとひっくり返りそうになるボウルを押さえつける。混ぜるのもだんだんと慣れてきて、リズミカルに回すことに楽しさを覚えつつある。
「……そろそろいいと思うぞ」
「ェ、やっと慣れてきたのニ。 もう少シ混ぜてもいいだロ」
「楽しむのはいいが、一応調理がメインだからな」
「分かったっテ。 あとは容器に入れて冷蔵庫にぶち込むだけだろウ？ ここまでくれば余裕ダ。 ――ン？ あッ、ちょっト待ッ……」
ボウルごと小さいグラスに流し込もうとして、うっかり全部溢しかけ、心臓が止まりかけた。
ギリギリで止められ、お玉で容器に移して冷蔵庫に入れる。
しっかりと16個分のグラスに収まり、少し残った分も一応固めておくことにした。
「危ナ……」
飛び出しかけた心臓を撫でおろし、一息つく。
少々飛び散った氷水や流しに放置された洗い物に重い気分にはなるが、それらを上回るくらいには達成感とやり切った充実感が勝っていた。
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