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悟に何か言う訳でもなく。
写真を撮るわけでもなく。
思いがけないイベントにAは感動を覚える。
「綺麗。」
本気で喜んでいる様子のAを見て満足げな悟は、とうに花火に興味はなく。
持ってきたガリガリ君を頬張りながら彼女の様子を見ていた。
「先輩、こんなの、…わざわざありがとうございます。」
やっと出たお礼と共に、昔と同じように座ると、悟も同じように横に座る。
どうしてこのようなことをしてくれるのだろう。
見たいと思うタイプでないのは目に見えているし、現に興味なさそうである彼。
このようなことをされては余計期待してしまう。
「感激しすぎだろ。」
「しますよそりゃ、こんな特等席。」
「遠いだろどこが特等席だよ。」
「いいんです、特等席なんです。」
この言葉に含まれた意味が、女に慣れている悟にわからないわけがない。
それでもいいから今はこの気持ちを伝えたくてたまらなかった。
ふと暗い中ぶつかる視線と互いの顔の半分を照らす花火に、自然と顔が近づく。
目を閉じるべきなのだろうか、それでも暗い中美しく光る彼の目に吸い込まれて目を閉じられない。
この先に待つ展開に唇をきゅっと結ぶと、2人の距離はさらに近づく。
「あぁ、キスするんだ。」そう思ったとき、Aの身体は引き寄せられ、その代わりに唇が温かみを感じることはなかった。
「……悟、先輩？」
思いもよらぬ展開に声をかけるが返事がない。
Aはそのまま質問をつづけた。
「どうかしたんですか？なにかあったんですか？」
「なんでもねーよ。」
「なんでも？」
「気分だわ気分。」
「気分、ですか。」
「ちょっと黙ってろ。」
彼の香りと、自分とけた違いに大きな体。厚い胸板。彼から伝わる熱。
全てが心地よかった。一生で絶対に忘れることはないだろう。Aはそう思った。
彼の気が済むまで抱きしめられれば、なんだか元気に弄りあいする雰囲気もなく、ほんの少しだけ距離を縮めたまま2人は寮へと帰っていった。
それはもう、この上なく。幸せだった。
赤い朝顔が力強くツルを伸ばす文月。
少年の行く先も少女の行き先も光輝き向日葵が導く。
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こにしりおん(プロフ) - 0aa2t4497251v4jさん» お気遣いありがとうございます！どっちも頑張りますね。コメント嬉しいです (7月22日 3時) (
レス) id: bb58dec0f7 (このIDを非表示/違反報告)
0aa2t4497251v4j(プロフ) - 社会人一年目はしんどいのでゆっくりで書いた方が良いですよ。私生活優先です。ゆっくり仕事に慣れて下さいね。無理なく頑張って下さい (7月21日 15時) (レス) @page36 id: b21cc666ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こにしりおん | 作成日時：2022年3月11日 4時
