‣ ページ14
「おい、A。A、」
ゆらゆらと体が揺らされている感覚に目を覚ますと、そこには悟の姿があった。
「んあ。私寝てました？」
「クソデカいびきかいて腹だして寝てた。」
「うっそ」
「嘘。」
「だる。」
それが嘘だとしても寝顔をがっつり見られてしまったことに恥ずかしさを覚えた。
絶対にあほ面で寝ていたに決まってる。
「顔洗ってこい、いいところ連れてってやる。」
「絶対ろくなところじゃない。」
「じゃあ連れて行かねえよ。」
「行きます。」
夕方水にぬれてからシャワーを浴びた後少し化粧をしていたが、崩れてなくて安心した。
顔は洗わず、パウダーを塗りなおすと、薄付きのリップを塗って悟の待つ談話室に戻った。
「どこいくんですか？」
「いいからついてこい、」
グチグチ言っていても仕方ないAは、なにが待っているのかと悟とどこか行くことへの淡い期待から心臓をとくり、とくり、と。静かにはやめていく。
黙ってついていけばどこか通り覚えのある道を歩いていることに気づく。
「ここって、あの？」
「気づくのｵｯｾ。ほら、」
ちょうど一年前。星を見に行こうと上った山。今思い出してもドキドキするあの塀の前に居た。
もう一年前と違い、筋力も身体能力もけた違いに上がったAにとって、一年前は超えられなかった塀も上ることは簡単だ。
でも悟が当たり前のように登って手を差し出すものだから、登れないふりをしてAは彼の手を取った。
「ありがとうございます。」
ぎゅっと握られた手と、引っ張られた反動で触れあう互いの身体。
この時の身体のちくちくするような一気に血流が流れるような、この感覚は慣れることがない。
そればかりかそれは一種の快楽を呼び覚まし、もっともっとと依存性を発揮する。
その依存性はやがて彼への執着に代わり、Aは一年もの間諦めきれずにいる。
惜しくも離された手に寂しさを感じながら、いつもと変わらないように話していると頂上がすぐに見えてくる。
昔は体力がなくきつかった記憶があったが、案外そうでもなく、VIVI(2000年代若い子雑誌)の付録についていたハンディ扇風機の恩恵を受けながら頂上へとたどり着いた。
「え、」
先ほどから何かドンドンと音がしていたがこのことだったのか。
近いわけでは決してないが、夜空に咲き乱れる打ち上げ花火にAの目は輝く。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 200人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こにしりおん(プロフ) - 0aa2t4497251v4jさん» お気遣いありがとうございます！どっちも頑張りますね。コメント嬉しいです (7月22日 3時) (
レス) id: bb58dec0f7 (このIDを非表示/違反報告)
0aa2t4497251v4j(プロフ) - 社会人一年目はしんどいのでゆっくりで書いた方が良いですよ。私生活優先です。ゆっくり仕事に慣れて下さいね。無理なく頑張って下さい (7月21日 15時) (レス) @page36 id: b21cc666ef (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こにしりおん | 作成日時：2022年3月11日 4時
