皐月。 ページ12
風が吹くたびに舞い落ちる桜が地面を所々桜色に染める頃、Aは伊地知と共に2年へと上がった。
あれほど悲しい思いをしても悟との交友は続いていて、悟の体術の指導や、彼がAの任務にしばしばついてきてくれては動きの指摘をしてくれたお陰もあり、Aは準一級へと昇格した。
準とは言え一級になってからわかったことがある。任務の数が段違いに増えたこと。特級となればもっと忙しいだろうにAを鍛えるために時間を割いてくれていた彼にはとても感謝した。
新しい生活が始まり、人々がゴールデンウィークを過ごすことでその生活に不満が出始めた五月。
とうとう、Aと悟は顔を合わせることすらなくなり、悟もAも任務ばかりで授業にはあまり出られない日々が続いた。
五月が終わる日、Aがようやく任務が切れてふと談話室に行くと、もともとあの事件から静まり返っていた談話室は、Aと悟が夜会わなくなって埃被ったように静かだった。
試しにPS2を起動しれ見れば起動は遅く、談話室用に置いている各々のコップは動いた様子がなかった。
冷蔵庫も空。おいてある水とジュースの箱の中身も、一か月前と何も変わらず、1本もペットボトルが減っていなかった。
一年前、あれほどすぐにジュースがなくなり、夜蛾に無くなるのが早いとグチグチ言われたというのに、一本も減らなくなるほどに談話室は使われなくなった。
「はあ、」
ことごとく突きつけられる現実にため息をつくと、誰がいつ使いたいと思ってもいいようにコップを洗う。
きっと悟と話す時間ができるのも7月くらいになるだろう。
一年前の賑わいが嘘のようで、Aは一人寂しく部屋に戻っていった。
静かにそよめく葉が美しい皐月。
集う喜び、集えぬ悲しみを胸に、少女は一人進んでいく。
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こにしりおん(プロフ) - 0aa2t4497251v4jさん» お気遣いありがとうございます！どっちも頑張りますね。コメント嬉しいです (7月22日 3時) (
レス) id: bb58dec0f7 (このIDを非表示/違反報告)
0aa2t4497251v4j(プロフ) - 社会人一年目はしんどいのでゆっくりで書いた方が良いですよ。私生活優先です。ゆっくり仕事に慣れて下さいね。無理なく頑張って下さい (7月21日 15時) (レス) @page36 id: b21cc666ef (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こにしりおん | 作成日時：2022年3月11日 4時
