君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ10)

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「お気をつけて。」

帳の前で見送る補助監督にお礼を言うと、帳へ入る。
なぜ心霊現象が多発するか一瞬で分かるほど気持ちの悪い雰囲気が漂い、Aは壁からぬっとあらわれる呪霊たちを目の前に苦無(ｸﾅｲ)を握った。

「先輩、初めてもいいですか？」

「どうぞ、怪我の無いよう。」

といってもAは親の監修なしでの任務は初。
しかしやることは変わらない。Aは強く踏み込むと、じゃらりと音を立てて苦無を宙に浮かべると呪霊をめがけてまっすぐへ飛ばす。

蠢く呪霊たちはAの苦無の刺さった場所から縄に締め付けられ祓われる。
するとまたもやうじゃうじゃと出てくる呪霊に、Aはすかさず帰ってきた苦無をまた飛ばした。

「っ！」

苦無を飛ばしている間に寄ってきた一体の呪霊が、Aに憑かんと寄ってくる。
七海はその様子に一瞬体が動いたが、一度じっと待ってみることにした。
すると、Aは他５本と違って一回り大きな苦無を取り出し、逆手に持つとそのまま振り返って呪霊に蹴りを入れて間合いを作ると呪力を込めて苦無で横一直線に切った。

…だが心霊スポットになっているため、祓って振り返るとわんさかと１５は湧いている。
Aはそんな状況を見るとまだ未完成であるが、まとめて祓うことにした。

「……邪縄呪法・簡易領域。」

浮かんだ５つの苦無がAの目の前に大きな五角形を作り地面を刺す。

「怪異呪縛(じゅばく)。」

Aの前に作り出された小さな領域は、まるで世間のしがらみのように、縛り付ける様々な規律のように呪霊たちを大きな縄で縛り付けて祓った。

まだ来るのかと構えるAであったが、先ほどの簡易領域に居たのが最後のようで戦闘態勢を解くと、苦無を呼び寄せた。

「驚きました。」

後ろから投げかけられた声に振り向くと、Aは先ほどのを冷静に見守られていたと思い少し恥ずかしくなる。

「なんだか恥ずかしいですね。」

「誇るべきことです。すぐに一人で任務することになるでしょう。」

「七海先輩に言われるとお世辞じゃない気がして調子乗ります。」

「調子には乗らないでください。帰りましょう。」

前言撤回。やはりとっつきにくい。が、そんな一癖ある七海と話しているのはなんだか楽しいようだ。

帳がなくなり車まで戻ると、張り切りすぎたのか強い疲労感にすぐ寝てしまう。
本当にすぐ。吸い込まれるように眠ったAが起きたのは呪術高専に到着しての話であった。