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「なあA。俺強いよね？」
「そうですね。認めたくないけど、認めてしまう程。」
「でも、俺だけ強くても駄目らしいよ。俺が救えるのは他人に救われる準備がある奴だけだ。」
「救える人がいるだけ、いいんですよ。」
「それはお前もだろ。」
「私は、周りが離れてばかりですよ。」
Aの発言に、悟は驚いた顔でAを見ると、Aはゆっくりと胸の内を話し始める。
「私にはもう硝子先輩と悟先輩と七海先輩と伊地知君しかいませんよ。日葵も、傑先輩も、親も。皆もういません。」
鈴虫の鳴き声が2人の間に生まれた静寂を埋める。
そう語る彼女についてじっと考えると悟は口を開いた。
「お前、親が死んだこと受け入れ切れてねぇだろ。」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするAに対し、悟は言葉をつづける。
「偉そうに悲しいけど出会いを大切にするだのなんだの語ってたけどさ、受け止め切れてねぇじゃん。誰にも頼らず強いふりしてるだけ。すげーだせぇ。」
"父や母、祖父母に小さいころから言われて育ってきたんです。
呪術師はいつ死ぬか分からないから、別れより出会いを大切にしろって。
勿論悲しいけど、みんなと楽しく過ごすのが楽しいのでそっちに集中するようにしてます。"
4月に彼女が彼に言った言葉だ。
あの時悟が感じた違和感は、彼女がなにも受け止めた気になって全く受け止められていなかった負の感情。
Aは自分でも気づかなかった本当の自分に何かが崩れ始める。
高ぶっていく様々な感情に息が浅くなると、涙を流さぬようぐっと唇とかみしめてこらえる。
「大体お前んないい子ちゃんじゃねぇじゃん。いい子ぶる必要もねぇよ。」
「…先輩。」
もう泣いているも同然なAの顔を見ると、悟はAの肩を抱き寄せ、座ったまま自分の腕の中に彼女を閉じ込める。
「先輩…っ、私、わたし、悲しいです。灰原先輩が死んだのも、親が死んだのも、ぜんぶ、全部。」
「知ってる。」
「日葵と傑先輩が出て行ったのも全部、嫌です。
仕方ないことじゃないです、嫌です。悲しいですっ…、
怖いんです、全部逃げたい、もうっ、ひとりに……、一人にしないでっ、。」
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作者名：こにしりおん | 作成日時：2022年2月9日 4時
