君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ43)

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…そんな話をしながらできた支度。もう何か月もしていればAも日葵も慣れたものだ。
いつものように並べてあるいつものポジションのいつもの箸とコップ達。
見慣れた風景になんとなく、心がきゅっと掴まれた感覚がした。

「さて、みんなを呼んできて。」

硝子に言われ、Aと日葵は全員を呼びに男子寮へ向かった。
一人ひとりノックしていくと、出てきた面々は交流会の汗を流してさっぱりした様子だった。
全員が揃ったところで硝子から優勝祝いだと酒を渡され(※お酒は二十歳から)、人生初の酒に若干の背徳感を感じながら、案外ジュースと変わらないことに驚きながらも3本ほど缶をあけた(※お酒は二十歳から)。

悟が下戸だということ、傑は硝子と張るというか限界が来ないほど酒が強いこと。
七海、日葵はひと缶で眠り。伊地知は悟に無理やり飲まされ(アルハラダメ絶対)、Aは硝子に飲まされながらもなんとか生き残っていた。

いつものようにゲームをして盛り上がり、眠るメンバーや部屋に帰るメンバーが出るというより、一人ひとり眠っていった。
それは硝子も例外でなく、残ったAと悟と傑は随分と酒臭い静かになった部屋で話した。

「よく生き残ってるじゃないかA。」

「もうフラフラですよ。立てないと思います。」

「じゃあ立てよ動画取っといてやるわ。」

「飲めないからみんなの土台にも立ててない人がうるさいですね。」

そう言って追加の水を探せば、水のペットボトルは空。
用意されていた水は3本。空になったペットボトルも3本。
面倒なことに買いに行かなければならないようだ。
Aはどうやら重い腰を上げないといけないようだ。
眠っている両サイドの日葵と硝子を起こさぬよう立ち上がると、思いのほか平衡感覚が取れずにまた同じ場所に座り込んでしまった。

「どうしたんだい？」

「お水ないから買いに行こうと思ったんですけど…こんなに感覚おかしくなるんですね。」

「一度夜風にあたるといい。悟、自販機に連れて行ってあげなよ。」

「は？なんでだよお前も来いよ。」

「私の分も頼むよ。私も随分酔ったようだ。」

彼はきっと嘘をついている、酔っているようには見えない。
しかし悟と夜抜けだして自販機に行けるのならば、Aはそれでよかった。

「わかったよ行けばいいんだろ。行くぞ酔っ払い。」

Aはやってきた好機にうなづくと、座ったまま後ろにずれ、迎えに来てくれた悟の手を借りて立ち上がる。