君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ41)

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長月。ページ41

ネタバレ注意！！以下重大なネタバレ要素を多く含みます。

アニメ勢のかたでネタバレが苦手な方は閲覧をおやめください。

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しかし、そんな尊い青春から一週間後。

七海と共に向かった2級呪霊の討伐任務に失敗し、灰原は死んだ。
任務失敗後に、呪霊は土地神であり２級呪霊ではなく１級呪霊であったことが判明し、七海と灰原には重い任務だった。

鈍器で頭を殴られたような。心にぽっかりと穴が開いたような。
そのような気持ちが抜けなかった。
まるで両親が死んだあの日のように。

彼の亡骸に向かって泣き叫ぶ日葵をなだめながら、涙を流さないようAは自己を保つ。
いつも一緒にいた七海が、壁をこぶしで叩きながら悔しそうに彼の死を惜しんでいたことをよく覚えている。
悟が任務を引き継ぎ任務自体は成功であるが、若い術師の芽が刈り取られたことは青春を共にした子供たちには大きすぎた。

やっぱり人は死ぬ。

それがAの感想だった。
日葵と同じように子犬のように灰原に慕われていた傑もまた、あの夏の日よりも表情に影を落とす。
Aは両親が死んでも泣かないように食いしばった。
でも、隣でわんわんと泣き喚く日葵につられてほんの少し涙が出た。

「A、気持ちは大丈夫かい？」

「私は、はい。」

「なら日葵を部屋に連れて行ってくれ。落ちつ行かせてやってくれるかい？君も今日は部屋でゆっくりするといい。」

「わかりました。」

傑に言われ霊安室を出ると、Aが先ほど差し出したポケットティッシュを使い切ってもまだ足りない彼女にハンカチを差し出し、自分の部屋へ戻った。
力なくベッドの淵に座ると、どうしようもなく考えが巡る。

灰原と仲良くできてよかった。
彼と惜しみなく楽しく旅行ができてよかった。

そう思う反面、両親祖父母が死んだときのように悲しかった。
この上なく悲しい。
悲しくないわけがない。寂しくないわけがない。
Aは静かに涙を流すと、自分が志したように、自分の両親に教えられたように、その涙で鳴くのは終わりにして涙をひっこめた。

自分が強くなって死者を減らす。
それしかこれ以上悲しくならないようにする唯一の方法だった。

いつも明るい高専寮は、この上なく静かで。
この静けさは2週間ほど続いた。