君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ39)

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「先輩、写真撮りましょ。」

傑と硝子のもとへいつの間にか移動している日葵をみて、Aは悟に写真を撮ろうという。
今までのこの４か月、彼と一緒にいることは灰原や七海よりも断然長かったが、ツーショットをとったことはなかった。

「しゃあねぇな。」

「わー、やさしー。」

棒読みでそういうと、Aは自分の携帯を出す。
実は最新機種のAは、ガラケーの画面の部分がクルっと回るタイプのもので、内カメラで自分の移りを確認しながらシャッターが押せる画期的なものである。
画面に収まる自分と悟にピントを合わせると、かしゃっと一枚撮った。

「もう、サングラス外してくださいよ。」

「要求多いなお前。」

悟は面倒そうにサングラスを外すと、Aの頭にサングラスを乗せる。
驚いて振り向くとはよしろと急かされ、向き直ると、Aはシャッターを切った。
初めて見るサングラスを外した姿に、心臓は高鳴りに高鳴り、美しい彼の顔に見惚れる。
それを知られぬよう、目をそらすとサングラスと頭につけたまま日葵達のほうへ走った。

「どうしたのAそれ。」

「悟先輩に貰った！」

「あげてねーよ、返せガキ。」

「傑先輩にあげます！」

Aは傑にサングラスをかけると、瓶を落とさないように鞄に仕舞って後ろのほうで仁王立ちしている夜蛾のほうへ逃げた。

「お前たち本当に元気だな。」

「先生写真撮ってください。」

渡した携帯で全員の写真を撮ってもらうと、「旅行が終わってしまうのだな」という寂しさに襲われる。
3日間本当に遊びつくしていたAらに若干引いている夜蛾に連れられ空港までバスで戻るが、それでもなお、お土産広場ではしゃいでいた。