君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ35)

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「そんな風に言わないでくれよ、こうして話すのは初めてだっただろう？私は楽しかったよ。」

「それならいいですけど……。」

そう言って背を向けて木陰を出ていく彼を、Aは心配そうに見送る。
彼の背中が悲しいと言っている。
彼の詳しいことは何も知らないが、そう言っているような気がしてならなかった。

「先輩！」

「？」

振り向かずに立ち止まる傑は、Aの言葉を待つ。

「無理しないでくださいね。深くを知らない私だからこそ、待ってます。いつか話してくださいね。」

Aの中の不安を、言葉に乗せて言うと、彼は背を向けたまま肯定も否定もせず手を挙げて歩いて行った。

～～～

「ついにきた！！！」

そんな彼との会話から2週間。
日差しは容赦なく強まるばかりの夏休み最終日。
呪術高専全生徒は、夜蛾と共に観光者で溢れかえる沖縄へ降り立っていた。

「じゃあ私は任務がある。夜の宿は時刻までに部屋に戻れよ。好きにしておけ。」

「え？」

「どうした？A。」

じゃあ任務へと歩いていく夜蛾にAは思わず声を上げる。
隣の硝子がAに問うと、Aはぽかんとしたまま口を開いた。

「先生と回るんじゃないんですか。次はここにいきますよーって。」

「違うよ、術師は人員不足だからな。夜に宿にさえ戻れば何してもいい。」

「まじすか！！！」

早くも帰りたいモードの伊地知をおいて盛り上がる日葵とAは、2年と3年に行くところを任せられた為、熟考した挙句、1日目はビーチでしょと宿泊者専用ビーチへと直行した。

「最高ー！！」

さっそく水着に着替えたAと日葵は、宿で借りた浮き輪とスイカボールを持って白い砂浜と美しい海に向かって叫ぶ。
しかし見学3名。硝子、七海、伊地知。人数は多くあるべきと思ったAは同い年の伊地知をターゲットにした。

「伊地知くんも遊ぶよ？」

「いえ、私は結構です…。」

「じゃあ今服のまま海に投げられるか、水着に着替えて投げられるかどっちがいい？」

「いや、あの…。」

「そっかあ、服のままかあ。」

「はい着替えます。」

一応持ってきていたのだろう水着を取り出すと、更衣室に向かい、彼は強制的に着替えてきた。

「いじめじゃん。」

「違いますよ。いつも先輩が私にやってるやつのほうがいじめですよ。」

「俺がなにしたってんだよ、おら。」

突如隣に現れた悟にドキドキしようとしたその時。