葉月。改変済 ページ34
それから少しして、悟は最強になった。
あの忌々しい事件を通して、彼は変わった。
Aもまた、はたから見れば変わっただろう。
悟からはみなぎる無下限呪術の呪力が、傑からはなにか影を落としたような、
そんな雰囲気を感じていた。
その話はまた後述するとしよう。
夏休み真っ只中の呪術高専。
Aのように夏休みを呪術高専で過ごす人は少なく、遠くに住んでいる日葵とはメールのやりとりばかり。
けが人が出るとやってくる硝子や、任務後に暇をつぶしに来る悟。
この2人か夜蛾と関わってばかりであった。
「あ、傑先輩。」
任務が終わってグラウンドをランニングしていると、久しぶりに見た影にAはすぐ駆け寄った。
「やあA。久しぶりだね。」
「お久しぶりです、元気にしてましたか？」
「お陰様でね。」
「日葵が2人で任務に行ったって喜んでました。いつもありがとうございます。」
「喜んでもらえたのならよかったよ。」
なにか長話の予感がした2人はなんとなく近くの木陰のベンチに腰を下ろす。
「先輩は、日葵が好きなわけ…ではないですよね。」
「可愛いとは思うよ、可愛い後輩さ。それは君も一緒。」
「…ですよね。」
「君は悟が好きだろう？A。」
「……。」
にっこりと笑う細い目の奥に見える確信をついた言葉にAは声を詰まらせる。
「否定はしません。日葵と同じように推しです。きっと。」
「そうは見えないけれどね。まあこれからも悟を頼むよ。」
「彼に私は必要じゃありません。むしろ傑先輩のほうが悟先輩にとって必要な人です。」
「…呪術師はいつ死ぬか分からない。だろう？」
「そうですね。でも強いお二人なら死なないですよ。」
「そうだといいね。」
彼の顔には影が落とされ、それはなにかの到来をにおわせる。
その時の彼の表情をAは、大人になっても覚えている。
この時もっと質問攻めしていれば、彼の心の変化に気づけたのだろうか。
「…どうかしましたか、先輩。悲しそう。」
「そんな顔をしていたかい？この日差しのせいかな？」
「日差しのせいで人は悲しい顔をしませんよ。しかもここ木陰です。」
「疲れているのさ私もね。任務が多くて呆れちゃうよ。」
「引き留めてしまってすみません。」
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作者名：こにしりおん | 作成日時：2022年2月9日 4時
