君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ33)

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そして静寂。
歯切れの悪いこの状況に、最悪の居心地を感じたAはいたたまれなくなって携帯を開く。
特にメールが来ておらず、やることがなくてあわあわとフォルダをあさったり、普段見ることなんて絶対ない携帯会社からの意味のない無駄なメールを開いたりしていると、悟がこう呟いた。

「付き合い悪くねぇところは評価してやるよ。」

普通に聞けばなんて上から目線な返事ではあるが、ツン要素100％の悟のこの返事が、悪い返事ではないことがわかるAは、携帯を弄る手が止まり、驚きで目を見開いて悟を見た。

「素直じゃないですねぇ。私の事大好きなくせに。」

「あぁ？？？？」

キレ始めた悟を見るとAはきゃーっと笑いながら走って、前を歩く硝子にしがみついた。
暑苦しいと硝子に振られていると、見知ったグラウンドまでたどり着く。

気持ちは伝えられなかった。
でも、大人になった今でも覚えている、この夏の夜を。

色褪せぬ文月。
芽生える麦わら菊の花に無邪気な純愛を添えて、一生の記憶を得る。

～～～

「君の知らない物語」という歌をもとに作りました。どうぞお聞きください。