君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ32)

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怖がる伊地知も信頼がない悟も面白い一行は腹を抱えて笑う。

「これはひごおこ(日頃の行い)ですね。さすがに。」

「私は夏油さんにお願いします……。」

さささーっと移動していく伊地知を見てさらにAが馬鹿笑いしていると、硝子や日葵もぽんぽん降りて、とうとう取り残された自分の番になった。

「お前降りられるだろ、」

「私を何だと思ってるんですか。」

「雑魚。」

「もういいです降ります。」

そう。行きは乗り越える必要があったが、山の傾斜があり、帰りは塀から飛び降りるだけなのだ。
Aも別に怖くはあるが1.7ｍくらいであれば勇気出せば降りられるような気がした。
そして勇気を出して飛び降りると、降り始めから悟が腕を持ってくれてなんとか鈍い脚に響くような衝撃は抑えられた。

「ありがとうございます、今日は優しいですね。」

「いつもジュース奢ってんだから毎日優しいだろ。」

「わかりました、そういうことにしておきますね。」

先に降りて行って楽しそうに2人を残して去っていった皆をみて、この機会をいいことにAはこう続けた。

「先輩のそういうところ好きですよ、」

Aの中の精一杯の意思表示だった。
言葉を紡ぐと喉が熱い。別に告白をしたわけではないのに、心臓のドキドキが止まらない。
「気持ちわり、」とか言われるんだろうと思っていたが、案外違う答えが返ってくる。

「そーかよ。」