君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ31)

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排気ガスで汚れた東京で、このように星が見えるとは思わなかった。
見えることは見えるが、今見ている夜空は星が浮き出ているようで、とても幻想的だ。
そんな中日葵の正解発表とAの反応に笑うほかの人、そして当人達は絵にかいたような青春に心を掴まれた。

「大三角形は後ろ側だよ、A。」

「マジでズルい。」

夏油の指す後ろ側は木で何も見えなくて、Aは大きなため息をついた。
硝子にならってAの隣に悟と傑が座り、Aは日葵と硝子が喋っている間に2人の会話に入った。

「あちい、帰りてえ。」

「星見に行こうって誘ったのは悟じゃないか。」

「飽きたわ。思ったよりショボい。」

「東京じゃ綺麗なほうだよ。ね、そうだと思わないかい？A。」

「え？あ、はい。」

せっかく話に入れてもらったのに、先ほどのアイスの棒を咥えて余裕ありげに手を差し出す悟が思い浮かんで話に乗れなかった。
夜なのに月明かりに照らされる彼の顔が眩しくて、頭から離れてくれない。
悟と傑だけは絶対に興味を持ってはいけないと、硝子から話を聞いていたときそう思っていた。
でもそれは実際興味がないふりで、胸をちくちくと刺す痛みは増していく。
これが好きになるってことなんだなと、Aはこの満点の星空の中、一人で納得した。
別に今まで中学で彼氏がいなかったわけでも、恋愛をしなかったわけでもない。
ただ、今までの彼氏は"いい人"で、屑の沼にはまるのは初めてで、余計心はときめきを覚えるものである。

「かえろーぜー。」

「そうだね、悟は歩きながらアイス食べただけみたいだけれど。私は楽しめたよ。」

「私も！」

傑に並んで日葵もそういうと、何となく皆帰る方向へ歩き始めた。

「Aどうかした？静かだけど。」

「なんもないですよ硝子先輩。騒ぎすぎて疲れました。」

「Aが騒いでなかったら基本お腹痛いだからな、何もないならよかった。」

「なんかそれディスってます？」

「あー、褒めてる褒めてる。」

「もう！」

行きがけほどの元気はなくとも、それでもわいわいと下っていくと、先ほどの塀まで降りてくる。

「もうここまで戻ってきたんだねぇ、」

「いうて歩いて10分くらいだもんね。」

先ほどと同じように傑と悟が先に降りると、七海や灰原が先に降りていく。
しかし、そこから流れが止まってしまった。

「伊地知www大丈夫だよ降りなwwwwww」

伊地知が悟にあたってしまい、落とされるのではないかと躊躇しているのだ。