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身長に見合う程の大きなごつごつとした手をしっかり握ると、グイっと引き寄せられ、その反動でAは塀を上る。
A如きではびくともしない悟は片手でAを引き挙げると、からかってやろうとほんの少しAの腰に手を添える。
勿論、からかいがいのあるAは軽く抱きしめられたようになっている状況にあたふたすると、小さな声でお礼を言いながら離れる。
「しゃあなしお礼に私のアイス半分あげますよ。」
「マジ？やった。」
棒アイス(ビニールに入ってて半分に折る奴)の半分を上げると、悟は本日３本目のアイスを口にする。
「ぽんぽん(お腹)痛くなっても知りませんよ。」
「俺最強だから大丈夫。」
先ほどまで山だから涼しいねなんて言ってたのになぜだろうか。
Aは暑くなってしまった。
きっと、夏のせいだ。隣にいる悟は関係ない。
もう既に気持ちを認めている乙女は、ほんの少しだけこの恋心に抵抗してみたりした。
小学生に戻ったようにはしゃぎながら歩いていると、夜空が見え始める。
見え始めたゴールに自然と足が速くなると、上った先に見えたまるで星を見るために作られたかのような丘に皆腰を下ろした。
「めっちゃきれいだね〜。」
「やばいねこれ、写真取れるかなあ？」
日葵と携帯を夜空に向けて写真を撮ってみるが、綺麗にうまく取れず、結局ぼんやりとした謎の黒い画像だけがなん十枚もフォルダに保存される。
「推しに持ち上げてもらってよかったね。」
「そう！！しかも傑先輩優しいから手添えてくれてさ！私が体術下手なの知ってるからゆっくり上げてくれたの。」
「いつから傑先輩呼びになったの……。紳士だね、よかったね。」
「そういうAこそ、ちゃっかり独り占めしてるじゃん。」
「そういうわけじゃない。たまたまよ。」
「たまたま、ねぇ。」
そんな乙女たちの会話に硝子も混ざると、Aと日葵は真ん中を開けて硝子が座れるようにした。
硝子は風下でちゃっかり煙草を吸ってきたようで、煙草の匂いがつんと鼻をかすめた。
「はいAに問題。」
「えー。」
「夏の大三角形はどれでしょう。」
「えーっと、あれとー、これとー。あの奴！」
日葵の問題に、Aはとりあえず明るそうな星を見つけて指さす。
「どれか分からないよA。」
「だからぁ、あれとあれとあれですよ。日葵正解は？」
「この中に無い。でした！」
「はあああ？」
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作者名：こにしりおん | 作成日時：2022年2月9日 4時
