君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ29)

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「あ！！！！！」

「なに？」
「どうした？」
「どうしたんですか？」

そんな罰則を受けた日から少しして、呪術高専は今日から夏休みに入った。
明日から実家に戻るため、せっせと荷造りをする灰原や七海、伊地知、日葵に相反するように、Aと悟は今日も今日とてわーわーと騒ぎながらピクミンで遊んでいたとき、急に悟は立ち上がってこう言った。

「星見に行こうぜっ！！」

‣

そうとなれば早いもので、夏休みで皆があえなくなる前にと、高専の裏山へと向かった。
七海と灰原、伊地知はコンビニへアイスを買いに。
女子は虫よけスプレーをしっかりして。
準備がしっかり整うと、アイスをかじりながら歩いて行った。

「たまには先輩もいいこと言うんですね。」

すかさず喧嘩を売りに行くAの言葉に、皆笑う。
笑われたことに腹を立てた悟は、伊地知のまだ食べ始めていないアイスをとって２つ目に突入した。

「かわいそ、」

「伊地知恨むならそこの雑魚恨めよ。」

わいわいとそんな話をしていると、高専の敷地外に出るようで、塀を乗り越えなければならないようだ。

「私たちが引っ張り上げよう、ね悟。」

「はああ？俺アイス食ってるから無理。」

「ね、悟。」

傑の圧に負けた悟は、嫌々長い脚を使って塀の上に上る。
特に意識していたわけでもないが、悟の目の前にいたAは日葵のいる傑のほうに行こうとしたが悟に阻まれる。

「てめぇなに逃げてんだよ。」

「なんか落とされそう。」

「俺を何だと思ってんだよ。」

「屑。」

塀の上から話されているのがよけい見下されているようで、Aは悟といつもの口喧嘩を始めた。
その間にも、身長の高い七海も引っ張り上げる役に買って出たので、A以外の全員が塀を超えてしまう。

「ねえ傑先輩助けてください！！」

「さてみんな行こうか。」

「傑先輩って実は相当屑ですよね。知ってましたけど。」

そんなAの悪態もスルーして進んでいく一向に、Aは目の前の悟に頼るほかなくなる。

「……あげてください。先輩。」

「何？」

「あげてください。…私が悪かったです。」

恥ずかしそうに、悔しそうに言うAが心底可愛いと思いながら、悟は満足げにニヤリと口角を上げると、食べてしまったアイスの棒を咥えてAに手を差し出した。
そんな一連の動作が、暗闇の中でもわかるほど格好良くて、Aは心臓が締め付けられる。