君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ27)

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文月。ページ27

「あぢーーーーー。」

雨季が終わり、森に囲まれた呪術高専はセミの大合唱を毎日披露される。
英語と古文の間の休み時間に入ったAはここぞとばかりに机に雪崩伏した。
今は伊地知が任務で不在のため、ここぞとばかりに足を大きく広げていた。

「Aー、みっともないよー。足くらい閉じて～、」

「高専がクーラー強くしてくれたら閉じるよー。」

「五条先輩が見たらなんて思うか。」

机に顔を伏せたまま五条という言葉に反応するA。
それをみて日葵はやれやれとあきれながら言葉をつづけた。

「そろそろ告白すればいいのに。」

「告白って言葉、それ地雷。」

「仮に付き合ったとして不幸になるかなんてわかんないじゃん。」

「……今日の桃鉄行きたくない。」

「じゃあ行かないって伝えとくね。」

「嘘です。行きます。」

6月のお化け屋敷とカラオケの出来事以降、Aはずっとこの調子である。
当時の話を日葵には伝えていて、一方日葵と傑の間には本当に何もないと聞いて驚いた。
日葵が傑を推している話は高専中に広まり、それを踏まえたうえで仲よくしているようで、Aも出来れば悟とそうなりたかったと思っているところである。

「はぁーーーーー。」

「もうすぐ夏休みよ？このまま拗らせて迎えるの？」

「拗らせてない！」

「拗らせてるでしょ。」

「はあーーーーーーーーーー無理。」

「八九寺さん足くらい閉じなさい！授業始めますよ。」

気づけば教室に入ってきていた古文の女性の先生が、Aの足癖に言及する。
と言われてもあまり足を治すこともなく授業は始まり、50分間うとうとしながら授業を受けた。

秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種の花

萩の花尾花葛花瞿麦の花姫部志また藤袴朝貌の花………

最初は授業にいない伊地知のためにノートを２つ取ってあげていたが、睡魔に負けてしまった。
結局日葵がノートをとっていたのでAがみみずを張り巡らせたノートは、見せずに済むようだ。
しかし、ノートを見せなくてよくても授業中である。睡魔との戦いが最高潮に達した時、Aの目の前には先ほどまでAに子守唄のような授業を披露していた先生が立っていた。