君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ20)

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‣ ページ20

「あーこのプリント、俺たちの時も同じ奴で丸々出たわ。」

「マジ？」

「マジ。」

教科書に挟んでおいたあまりメモをされていない古文活用表。
サングラスをずらしてみる悟の顔にAは見入ってしまい、古文活用表何て言葉は耳を通り抜けていた。

「惚れた？」

「いや、…眼、きれいだなって、」

息が苦しくなるほどの鼓動と共に苦し紛れに出た言葉は、否定しきれてない言葉で。
悟もまた、「何言ってるんですか外見がよくても中身がダメだと無理ですよ私。」なんて憎まれ口をたたくAが、苦し紛れに否定する様子にはにかむ。

「お前初対面で俺が五条ってわかったのって、」

「さすがに御三家と関わってないとはいえ八九寺ですからね。六眼ってすぐわかりましたよ。」

どうにか上手く話をそらした悟に乗せられ、どうにか落ち着きを取り戻したAは出会った人のことを思い出す。

「そりゃ何でもかんでも見通せたら眼も疲れますよね。」

「まあな。」

「また今度肩もみしてあげますよ。」

「は？」

「テスト勉強手伝ってもらってるので、イチゴミルクも買ってもらったし。」

「…変な奴。ほら、やんぞ。」

悟に活用表のプリントを押し付けられると、Aはそのプリントを渋々読み始めた。

「数学と英語はまだ導入だからいいんですけどね～、呪術関連は余裕だし。」

「だろうな。」

そんなことを言いながら古文活用表を眺めるが、全く覚えられる気がしない。
授業は中学の時から同様寝るかぼっとするか暇つぶしにノートをとるかであるからだ。
伊地知や日葵は授業をしっかりと聞いているからもうすでに覚えているだろう。しかし、Aは呪術にステータスを全振りしてしまったため、この活用を何に使うのか、何のために覚えるのかすらわかっていなかった。

「お前授業寝てるだろ。」

「先輩が夜遅くまで桃鉄させるからですよ？」

「俺のせいにすんなガキ、四段活用は"あ"から"え"までの4段まで使うから四段活用な。上二段は"い"と"う"。わかるか？」

「……悟先輩って頭良かったんですね。」

「悟様だからな。」

段々を近づいていく距離に気づかず2人の影は、朝の5時まで寄り添ったまま楽しそうに教科書と向き合っていた。

まだ傍に居たいって言えるような距離になれたら。

認めた皐月。

赤いツツジは恋の喜びを知るように、白いツツジは初恋の純白さを魅せる。